文 | ナノ
(君のくれる幸運)

「狛枝くん・・・」

照れたように苗木くんがニッコリ笑う。
その陽だまりのような笑顔にこれからどんな不幸がきても乗り越えられると目を細めた。


僕みたいな虫けら以下が希望の塊である苗木君とお付き合いできるなんて、おこがましいと思った。
でも、僕の切り落とした左腕を見て泣いてくれた。
好きなんです。と必死に体全部で伝えてくれた。
こんなにも、必死に僕を愛してくれる彼を突き放せるわけがなかった。

「あはは・・・」
「?どうしたの?急に笑い出して・・・」
「僕は本当に幸運だなって思ってさ」
「何が幸運なんですか?」
「この瞬間がだよー」

にこっって笑って苗木くんについばむキスをすれば、ボフンッと顔が真っ赤になる。
そんな所もかわいいな。
本当に、僕は幸運だ・・・。


木くんが遊びにこの島に来てくれた日。
立て付けの悪い部屋に閉じ込められてしまった僕と苗木くん。
まぁ、2人っきりになりたくて、ここに行こうって誘ったんだけどね。
まさかこんな事になるとは思ってなかったから、誰にも告げずに来てしまったし、この広い島で、僕らを見つけるなんてできるだろうか・・・しかも数人で。
でも、僕の幸運できっとすぐに見つかるだろうと思っていた・・・だが、何日たっても人が来ない。
島の隅っこにあるここじゃ、みんなも来ないかもしれない・・・。とため息を吐いた。
空腹や疲労から視界がぼやけてきて、ここまでかな・・・と天井を見上げた。

「大丈夫・・・狛枝くん・・・大丈夫!すぐみんな来てくれるよ!」
「あはは。分かってるよ・・・それに、どんなことがあっても僕の命を引き換えにしても苗木くんだけは助けるから。」
「い・・・嫌だよ・・・そんなのう、嬉しくない・・・一緒に助かるんだから!」

必死に僕を励まそうと、頑張る彼に僕は心が温かくなった。
そして、泣き出した苗木くんを片手で抱きしめて、僕はほくそえんだ。
この不幸からくる幸運はどんなモノだろうと、内心ワクワクしてしかたなかった。

そのまま、僕らは気絶するように倒れた。
次に目覚めたときは、ベッドの上で日向くんに心配そうに声をかけられた。

「おい・・・狛枝?おい・・・大丈夫か?」
「あれ?助かった?」
「助かった?じゃねぇよ!こっちは、寝ずに毎日探し回って大変だったんだからな!」

希望の彼に怒られるのも、悪くないなぁって嬉しそうにしてると頭をはたかれた。
頭をさすりながら周りを見渡すと、苗木くんが僕に向かって走ってくるのが見えた。

ああ・・・今回の幸運は、こんな代償で手に入れてしまった。

それから、彼はつり橋効果なのか僕を意識して、くれすぐにお付き合いするようになった。
信じてないわけじゃないけど、苗木くんにつり橋効果じゃないかな?とは伝えた。
でも、「違う」と「あの出来事の前から好きだった」と必死に僕に訴えかける彼に笑みが抑えられなかった。

彼が居る以上は、僕はどんな不幸も幸運になる。
でも、彼が離れたときにすべてツケとして不幸がおとづれるだろう。


END







ヤンデレを書きたかったんです。
監禁を書きたかったんです。

読んでいただきありがとうございます。




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