文 | ナノ
(午後は保健室で体育祭)
「なっえぎー」
カシャカシャッ
「わっ!」
「バッチリ記録に残したわよ!」
「さっすが超高校級の写真家!苗木の平凡さが滲み出てるいい写真!」
「江ノ島くんに小泉先輩…」
「いやぁ、本当にお似合いだぜ?そのチアガール姿。あははは」
「笑い事じゃないよ…提案したのは江ノ島くんでしょ?もう…江ノ島くんはちゃっかり応援服が学ランだし…ハァ…」
「あぁーその苗木の顔たまらなくいいね…最高ぅぅ」
「はぁ…」
今日は体育祭。
種目も半分終わり、午後の部が始まる前の応援合戦になった。
僕のクラスは、江ノ島くんが提案した女装交えてのパフォーマンスって事になったんだけど…僕に役割が回ってくるなんて思いもしなかった。
最初は不二咲さんに白羽の矢が立って、みんなでいいねって言ってたはずなのに…
「身長からしたら、苗木も絶対に似合う」
とか江ノ島くんが言っちゃったもんだから大変。
クラス全員に説得されちゃって、仕方なく引き受けた。
実際にやってみると、ダンスも簡単な躍りで楽しいし結果オーライだったんだけど、問題は今日…当日発覚した。
「江ノ島くん…なんか、スカート短いんだけど…」
「え?そういうものだよ?普通普通!」
「いやいやいや!不二咲さんは膝上なのに、僕のはパンツ見えそうなんだけど!しかもパンツ女の子…」
そこらへんで、恥ずかしくなってしゃがみこんだ。
パンツまで女の子のにされて、あんな大勢の前で踊ったり走ったりしなきゃいけないの!?
「…」
「ってか、江ノ島くんさっきから黙ってどうしっ…!?」
しばらく手を顎に当てて、考える仕草をしていたかと思ったら、急に僕を世間一般で言う…お姫さまだっこというものをしてきた。
「やっぱり苗木は出るの中止。」
「え!?江ノ島くん?僕、1人!?」
後ろから不二咲さんの困惑した声が聞こえるけど、江ノ島くんはお構いなしに校舎に向かって歩きだした。
「えっ江ノ島く…うわっ!」
ギシリッと堅いスプリングがきいた保健室のベッドに投げ飛ばされた。
「やっぱり、苗木は俺の前でだけ恥ずかしそうにしてればいいや」
「な、なにいって…だ、誰かたすけてぇぇぇ!」
僕の悲鳴は、午後の部開始の放送にかき消されていった。
END
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