文 | ナノ
(名だけの友人)


※名だけの恋人の続き
【じゅん視点】


むくろが苗木を好きだったのは、すぐに気付いた。
最初は、平凡な苗木を弄んで遊ぼうとだけ思ってた。
でも、気付いたら本気になって戻れないところまできていた。

「むくろくん・・・急に来れなくなって残念だけど、久々に江ノ島くんと一緒に出かけられて嬉しいよ!」
「・・・苗木・・・」

苗木と、むくろから貰った動物園のある公園に来た。
天気は良好。出かけるには最適の日に俺らの天気は曇り空だった。
動物を一通り見てから、公園内にあるオープンテラスでお茶をしながら、本来の目的である話をすることにした。

本当は、むくろはお前と俺の事を思って来なかったんだ。とは、言えず何から話せばいいか困ってしまった。
学校で、むくろと苗木が話してるのを見て心がズキズキした・・・腹の底からモヤモヤしたものが這い上がってきて、イライラした。
それが、嫉妬だと気付いてこんな情けない自分に絶望して喜んび、悶えた。

こんな自分を苗木が見たら、がっかりして絶望するんじゃないかと、期待した。
でも、その反面苗木にがっかりされて離れていかれたら・・・と思ったら・・・


喜べなかった・・・。


「苗木・・・なんで、俺はいつまでも江ノ島なの?」
「え・・・あ。えっと・・・」
「俺ら恋人だよね?恋人なら名前で呼んでくれていいだぜ?」
「う・・・ご、ごめんね…。付き合うとか初めてだから、よ、呼んでいいのかわからなくて…」

手元の紅茶をティースプーンでクルクル回しながら、苗木は下を向いた。

「本当は、ずっと…呼びたかったんだよ。」

下を向いたまま、ボソッと発したその言葉に、いてもたっても居られずに立ち上がった。
ガタンッと音を立てて、倒れるイスに苗木もビックリして顔をあげた。

「え、江ノ島く…!?」
「好きだ。苗木。」

苗木の傍まで行って、力任せに抱きしめると苗木は顔を真っ赤にしながらも、俺の背中に腕を回した。

「ぼ、ぼくも大好きだよ…じゅんくん…。」

決して大きな声では言ってくれなかったけど、俺には十分なくらい苗木の声は届いた。


恋人は俺なのに名だけで、友達のような接し方をする苗木…
友達はむくろなのに名だけで、まるで周りから見たら恋人のような2人…
苗木は、否定してもむくろの苗木を見る目は愛しい人を見るその目で、俺には不安で仕方なかった。
告白したのも、デートに誘うのも俺で、苗木からはなにも言われない事に不安で仕方なかった。
でも、今日初めて聞いた苗木からのお願いは可愛いすぎるほど愛しい言葉だった。


「はぁ…苗木をおもちゃにしようと思って声かけたのに、逆におもちゃにされちゃう俺…なんて間抜けなんだ・・絶望!はぁ…快感〜」
「もう…じゅんくん…」
「じゅん…帰ってくるなりノロケか…上手くいったならいいんだが…」
「む、むくろくん!ただいま!…って、これがノロケ!?いや、なんか俺を苛める計画告白しただけでしょ!?」
「完璧なノロケだろ?」
「えええええ!?そ、それは違うよ!!!」

END




最後はギャグっぽくなりましたが…じゅんくんの絶望ズキはあいも変わらずという事ですね。

読んでいただきありがとうございました。
次も是非おこしください。






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