文 | ナノ
(僕の王子様)

昔、よく母から聞かされたおとぎ話。
王子様がお姫様を迎えに来て、幸せにしてくれる点綴的な有名の物語。
小さい頃、母が絵本を読んでくれると僕と妹は、王子になりたい!お姫様になるー!と声を弾ませた。
そのたびに、母は優しそうに微笑んで

「大丈夫よ。好きな人にとってその人がどんな人でも王子様、お姫様なんだから。」
と、僕らの頭を撫でながら話してくれた。

僕のお姫様はどんな子なんだろうか…運命を信じて待っていてくれるだろうか…。
そう思いながら、ドキドキしながら絵本を抱きしめた。


「僕はお姫様…なのかな?でも、男だし…」
「何をいっている?」
「え、あ…今、昔母さんがよく読んでくれた本を見つけて…そしたら、その時によく話してくれた話を思い出してさ…」

いつもの様に、十神くんと図書室で本を読んでいた時に、ふと母さんの言っていたことを思い出した。
十神くんに独り言に反応されてしまい、昔の話をするとハッと鼻で笑いながら本を閉じ机に置いた。

「お前は、どう考えても姫ポジションだろ?夜は、女ポジなのだから」
「あー!あー!あー!ちょっと!なんでそういう事平気でいうのさ!!」

急に、夜の話をされて顔がボッと熱くなる。

「でも、お前はただ守られるだけのか弱い姫でもないな…」
「へ?」

僕が必死に顔の熱を冷まそうと、手で必死に煽るが冷めるわけもなく最終的には、本で顔を隠した。
そんな事をしていると、十神くんはボソリと何か言い僕が聞き返す頃には、また本を開き続きを読み出してしまった。

「…十神くんは小さい頃に、運命のお姫様がいるんじゃないかとかとか考えたことないの?」

少し落ち着いてから十神くんの隣にイスを置き、雑談程度のノリで聞いてみた。
いつもは返事が返ってこないことが大半だけど、今日はチラリと僕を見てから目線は本に向けたまま口を開いた。

「俺は、昔からそのような事を考えた事はない。小さい頃から十神家についてを叩き込まれてきたからな。童話は知識の1つでしかない。」
「…そうなの…かぁ・・でも、僕は運命のお姫様がどんなかなっていつもドキドキしてたよ!」
「…そんなに…」
「へ?」

ギロリと十神くんに睨まれて、背筋がスッと凍りついた。
よくケンカや睨まれたりするが、こんなに怖いと感じた事はなかった。
読んでいた本を音をたてて、閉じると立ち上がり僕を上から見下した。

「…お前は、さっきから姫…姫…姫…そんなに姫がよかったのか!!」
「え!?違うよ!」

お姫様の事をそんなに話してたつもりが無かったので、言われた瞬間に何を言われているのか理解ができなかった。
お姫様がどうとかじゃなくて、僕は運命の人がどんなかってドキドキしていただけなのに…

「そうだな…お前は昔から王子のような存在になりたかったんだな。俺みたいな奴の隣じゃなく、姫の隣に立ちかったと?姫なら舞園らへんがお似合いじゃないか?」
「っ!?ちょ、ちょっと待ってよ!!勝手に進めないでよ!!僕が言いたいのはそういうことじゃんくて…」
「じゃあ、どうだっていうんだ!?」

いつものちょっとした言い合いじゃなく、雲行きが怪しくなってきたせいで僕の焦りは頂点になった。
いつもは、僕が感情的に怒ってしまうばかりで今回は珍しく、僕に感情を出してくれた十神くん、なのに・・・
ため息をひとつはいて、本を開き涼しい顔をしていつものペースで本を読みだした。

「違うよ…僕は、王子とかお姫様とかそういうのじゃなくて、運命の人がどんな人かなってドキドキしてたんだ…今は、僕にはもったいないくらいの人に出会えたよ!って昔の自分に伝えたいくらいなんだよ!!」
「お前の言う“運命の人”っていうのは、もちろん俺のことなんだろう?」
「そ、そうだよ…なのに・・・!!なんでそんなに風でいられるのさ!」

僕に背を向けているせいで、どんな表情をしているかなんて分からない。
それが、更に僕の不安を煽ってくる。


「俺が運命の相手なら慌てる理由なんてない。」
「・・・さっき、慌ててたじゃん。」
「慌てたんじゃない。お前が姫姫と煩いから注意したんだ。俺は、慌ててもいないし冷静だ。“運命”で繋がってる俺ら俺らなんだから離れてもまた出会う。そういうものだろう?」
「と、十神くんがらしくないこと言ってる!!」
「フンッ。まぁ、俺は運命など信じては居ないがな。運命であろうとなかろうと、俺はお前を手放す気などないからな。」

そんなにハッキリと言われると、何も言えなくなってしまう・・・ってか、十神くんって俺様王子だよね・・・

ため息を1つ吐いて、十神くんに後ろから抱きついた。

「苗木・・・重たいし読書の邪魔だ。」
「ちょっとぐらい…いいじゃん・・・」
「・・・すきにしろ。」

ぶっきらぼうだし、厳しくてすごい意地悪だけど、その中に優しさがちゃんとあって、時々見せる笑顔とか僕をちゃんと見てくれる十神くん・・・
今、この体全体から感じる暖かさに自然とニヤけてしまった。

「苗木、今笑ってるだろう。」
「え!?なんで分かったの?アハハ・・・でも、十神くんもじゃないの?」
「…チッ」

何気ない会話ですら僕に幸せを与えてくれる。
この反応は、当たったんだろうな〜・・・十神くんもこの時間に幸せを感じてくれてるんだ・・・


小さい頃の自分へ

小さい頃に運命の人はどんなだろうと思い描いていたけど、僕はお姫様には出会えなかったよ。
でも、それ以上に素敵な王子さまに出会えました。
僕が守るわけでもなく、僕を守るだけでもない・・・2人で支えあう事のできる素敵な人に。

END





ひさしぶりに十苗かいて見ました!!!
十神くんがちょっと嫉妬して、苗木くんがアワアワしてるのがすごい見たいです!!
2人が一緒にいると、基本的に静かに読書か苗木くんが一方的に話しかけてそうです!!
という、妄想でした!!

読んでいただきありがとうございます!!





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