「――目ぇ覚めた?おはようテッちゃん」
「ここは……」
「俺の部屋。真に勝手ながら運ばせて頂きましたー!」
「え、何でボク……?」
「あっれ覚えてない?テッちゃん公園でバテて倒れたんだぜ?こーんな真夏日だからしゃーないっちゃしゃーないけど」
「そうでしたっけ……」
「ほらー!だから熱中症舐めると怖いって言われてるのわかったでしょ?」
「すみません……」

目の前の高尾くんからはさっきのような鋭さは感じられない。いつものちゃらけた雰囲気でけらけら笑っている。どういうことだ?さっきのはまさか夢?……さっきの彼が異常だったのはボクの勝手な妄想なのだろうか。やけにリアルだったけれど。
まあ、妄想だとしたら友人を勝手にあんな風にするとかボクはかなり失礼な奴になるのだが。

「テッちゃん?」
「あ、いえ何でもないです。すみません高尾くん」
「……――」
「高尾くん?」
「……何で?」
「えっと……?」

違和感。
途端彼に張り付いた笑みはぴたりと消えた。
不穏な空気に息が止まる。


「……もーお!二人の時は名前呼んでっていつも言ってんじゃんー!」
「あ、」
「そろそろ慣れたと思ってたんだけど?」
「す、すみません……」
「いつもみたいに和成くんって呼んでよーせーの!」
「和成くん?」
「ん、よし」
「あ、それでボクはどのくらい寝てました?」
「……丸一日くらい?」
「そんなに!?」
「そ。流石に水分取らないと不味いから水だけはあげたけど。あ、思い出したら和成恥ずかしくなってきちゃった!」
「ち、因みにどのようなやり方で……?」
「きゃー言わせたがるなんて意外とテツくん大胆なのね…!」
「一体何をしたんですか!!」
「……教えて欲しい?」
「え、ええ」

そう言うと不意に彼の空気が変わってぞくりとする。こちらに向けられた顔に思わず息を飲むとにやあと笑われた。

「あの…?」

なにか言ってくれ。

「あ、そろそろかな」
「何がですか!?」
「やだテッちゃん怖い」
「水の飲ませ方をさっさと教えて下さいよボクにいかがわしいことしてないでしょうね」
「ああ、それは後で目一杯教えてやっから……」
「後で?なんでまた」
「……ヒロインを助けに勇者達がこっちに向かってる気がする」
「は?ヒロイン?……、ああ、君までそういう事言いますか」
「あれ、違った?俺の中でテッちゃんとキセキの世代ってそんなイメージだけど?」
「やっぱりそう見えるんですかね、解せぬ。……あ、じゃあ差し詰めここは魔王城ですか」
「魔王城ここ!?せっま!魔王城ちょう狭い!つーか生活観丸出しなんですけど?」
「しかも魔王の正体鳥ですしね」
「鳥!?俺の鷹の目のこと言ってんの?」
「第一形態の人間バージョン倒すと第二形態の鷹になるんですよね?」
「それなんてRPG?」

そんな突っ込みを入れた途端ドアが物凄い音を立てて開かれた。
魔王城の門は問題なくあっさり突破されたようだ。

「高尾おおぉオォーッ!!!」

我が名を呼ぶは緑の相棒。そして魔王城の門(俺の部屋の入口)に立ちはだかる勇者ご一行……というか全員最強武器を携えたカラフルな勇者たちである。
何で俺んちの住所が割れてるかって?知るかよどうせピンクと赤色がチートしたんだろうよ。
横で小さな呟きが聞こえた。

「これは、魔王フルボッコフラグ……アーメン」
「ジーザス!!」



「……和成くん大丈夫です?」
「はは、俺の希望はテッちゃんだけだよ……」

よくあるRPGでは勇者が魔王を倒してヒロインのお姫サマを助けだし、仲良くハッピーエンドだけど、このお話は違う。なんてたってお姫サマが魔王を助けてくれるからな。姫は魔王に心奪われてしまった。魔王の甘い言葉にまんまと騙されて。

――魔王は勇者を見定め小さく笑う。


"さあ、お手並み拝見勇者サマ
君らの希望は既に俺の手中にあるぜ?"






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -