似非恋愛

「え ぇえー……」
「うわ帝人くんひどい顔」
「いや誰だって思いますよ誰得なんですかその突拍子ないアイデアは」
「俺得だね完全に」
「うわその顔腹立つ。何気ない倒置法腹立つ。ていうか臨也さん腹立つ」
「あっは帝人くん方向性変わってるよ」

手酷く貶されても尚もけらけら笑い続ける男の名は折原臨也。眉目秀麗、自称情報屋、そして変態だ。

「変態とか酷くない?」
「事実でしょう。っていうか心の声読まないでください」
「帝人くんのことなら何でも分かるに決まってるじゃん」
「……きもい」
「最近帝人くん口悪くなったよねぇ?」

あんたのせいだよ馬鹿野郎。小さく罵ってもこれは聞こえないフリ、らしい。

「でもなんですか急に添い寝とか……危険しか感じないんですけど」
「あっは!それが正しい反応だよ。ま、俺ってこんなんだからさ……そういう当たり前な思い出とか無いってだけなんだけどー」
「あぁ……」

で、唐突に僕と寝たいとか言いだした訳だ。だからっていきなり寝たいとかこの台詞だけじゃ怪しむに決まってるじゃないか。
本当に寝るだけなら僕だって断らないのに。
今や折原臨也ってだけで警戒されるんだ。小さい頃からこんなんだったら(今みたいに悪意まみれではないかもしれないけど)人に甘えるってことを知らないのも分かる気がする。

「……で?」
「うん?」
「結局寝るんですか?寝ないんですか?」
「やってくれるの?」
「あなたが別にいいならしませんよ」
「やってやって!!ベットこっちだからおいで」
「はいはい」
「ふふー帝人くん優しいねーそんな帝人くんが好きだよ」
「はぁ」

とすんと横になればふわりと体重を押し返すスプリング。いいベット使ってるなやっぱり情報屋って儲かるのかな。
なんだか楽しそうな臨也さんを見ると(おっさんが頬染めんな)やっぱりやめておけば良かったなんて考えがよぎるけど。

ふかふかベットに柔らかい臨也さんの黒髪を撫でてると自然と僕も気持ちいいからまぁ良しとする。
そうしていつの間にか僕も眠りの世界へ落ちてった。

**


「あーあ、寝ちゃったかー……情に負けて油断しちゃうなんて甘いよ帝人くん」

(ねぇ、大人は悪い奴ばっかりって教えただろう?)

「肌白いから跡着けたらずっと残るかもしれないなぁ」

もっともっと俺に近づけさせて、自分から来るようになるまでもう少し我慢、かな。

「ふふ、楽しみだなぁ楽しみだなぁ!」


さぁ、ゲームを始めよう!







▼これは恋でも愛でもなく。
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