Monday Knife

かの魔神の落胤は驚く程真っ直ぐな少年だった。幼い頃から『普通の』人間からは疎遠されていたようだし、少しくらい歪んでもおかしくないと思っていた。それこそ彼の弟程度には。やはり義父の愛情故か。ならば何故あれの弟は歪んでしまった?兄の重い運命を知り祓魔師になって兄を守ろうと、自身で重すぎる荷を背負ってしまったことに気付いていないのか。はたまた重い運命にも関わらず真っ直ぐな兄に知らず劣等感を抱いてしまったか。

「―…まぁ、どちらにしたってあれの悪魔堕ちの可能性は高いでしょうねぇ」
「何が?」
「いいえ、こちらの話です。…所で燐くん、何故君がここに?私は奥村先生を呼んだはずですが」
「あー…なんか雪男忙しいみたいでさ、伝達なら代わりに聞いてこいって」
「伝達は伝達なんですけどね…」
「うん?まかせろ!一字一句正確に覚えてやるぜ!」
「それ逆に不安なんじゃ……。まぁいいです、じゃあ『暇な時間に来て下さい』で」
「それ俺来た意味なくね?」
「本人じゃないと駄目なんですよ…それともまさか燐くんは10文字程度が覚えられないとでも?」
「馬鹿にすんじゃねー!」

ぴーぴー喚く姿は正に無邪気そのもので、知らない者は誰もまさかこの子が『そう』だなんて思わないだろう。
それほどに邪気が無いのだ。しかし、だからこそ事実を知る者に同調しようとする様は健気で痛々しく映ってしまうのかもしれない。弟なら、尚更。

「―…燐くん、」
「お?」
「もし、奥村先生が『此方側』に来てしまったら、どうします?」
「……雪男は大丈夫だよ。ただ、来ちまったら力ずくでもあっちに返してやるさ」
「燐くん、それは」
「知らねぇよ『こっち側』のルールなんか。俺はどうなったっていいけどさ、雪男は、雪男はまだ綺麗だから。」

こっちにゃ来ちゃ駄目なんだ。
小さくつぶやくのが聞こえた。嗚呼ここまで思われているのに、あの弟はそれに気付かないのか。兄の方は充分に強いというのに、兄を守るというのがただのエゴだと言うことにも。人間は弱く、脆い。だから私は時折大きな声で叫びたくなるのだ。
――大概にしろ。

「……キミが奥村先生を思うのは当たり前のことなのかも知れませんが、チョット面白くありませんねぇ?」
「理事長が先生に手ぇ出すってか?」
「さぁ?ただ私は快楽主義者ですから……楽しければなんだってしますよ」
「雪男には変なことすんなよ?それに…」

―お前は俺で充分だろ?
にやりと笑う様は正に悪魔…いや小悪魔、リリムの如く。

「…ふふ、全く適いませんよねぇ」




問題ない。




▼ 生意気な小悪魔さんの口は塞いじゃいましょう。




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