「……あっつうー」
「ほんと何なんスかねこの暑さ、体育館の湿気とかヤバすぎッス」
「……こんなもので音をあげるとは情けないのだよ」
「心頭滅却すれば火もまた涼し、ってやつだよ試してみるかい?」
「はあ?火は熱いもんだろが」
「……だからお前は馬鹿峰なのだよ」
「青峰っち……さすがに俺でもそれくらいは知ってるッス」
「ああ!?赤司緑間ならまだしも黄瀬に馬鹿にされるのは気に入らねえな」
「なんで俺が怒られてるんスか!」
「罰としてそこのコンビニでアイス買ってこい」
「カツアゲ!?」

「……黒ちんは生きてるー?」
「練習後に比べたら落ち着きました、ちゃんと呼吸はしてるので大丈夫ですよ」
「黒ちん……生きるって言うのはね、呼吸するだけじゃないんだよ?」
「急に哲学ぶっ込んでこないでください混乱します」
「えー……」
「ねー!黒子っちはアイス何が食べたいっスか?おごるっスよ!」
「あ、ありがとうございます……?」
「俺の分は?」
「無いっス!」
「えーそういうの贔屓って言うんだよー」
「紫っちはもうお菓子食ってるじゃん!」
「喉乾いたから俺もコンビニ寄ろーっと」

***

風が吹く。
生ぬるい風に混ざってシャンプーのような香りが鼻を通り抜けていった。
それに視線をやるとラムネのようなソーダアイスのような、ベイビーブルーの柔らかそうな髪が靡いていた。
何の気なしにそれに手を伸ばす。

「――髪、伸びたッスね」
「え?ああそういえば随分と切ってない気がします。そろそろ切らないといけませんね」
「テツぅ、1年の時みたいに前髪失敗しないようにしろよ?」
「あれはちょっと手が滑っただけなので」
「え?黒子っちって自分で髪切ってるの?」
「はい、まあ適当に」
「ふうん……黒子っちの髪って不思議な感触ッス」
「あまり触らないでください……」
「ふわふわ、だよね、ぜんぶ、」
(――おいしそう)
「えっ?」
「なーんてね!」


(食べちゃダメ。なくなっちゃうから。大事に、大事にしないと)
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