鬼さん鬼さん、こっちを向いて7
◆◆◆



「……ほんっとうにすまなかった!!」
「この、絶倫めが……」
「先生のなかが気持ちよくて…止まれなかった……」
「止まらなかった、だろ」
「うう、で、でも先生だって悪いんだぞ!あんな誘い方するから!」
「そ、それは!お前がおれを熱っぽい目で見てくるからおれから行ってやったんだろお!」
「強気!?でも……、俺はずっと先生が、一松が欲しかった」
「そういやおまえ、初めて会った時から、って言っていたけど、まさかおれのこと気づいてたの?」
「ん?最初の深川の郭のときは気づかなかったさ。初めて会った時…いや、筝の音色を聞いた時から、こいつが欲しいとは思っていた。不意に聞こえた筝の音がいいな、と思って、弾いている姿がいいなと思って、俺を呼ぶ声が、態度が、仕草が、この美しい芸者が欲しいって思って」
「ひひ、お熱いこって」
「だが噂の芸者は臨時で行方がしれないって言うじゃないか。1夜限りの出会いなんて寂しすぎる」
「いつ、おれだって気づいたの?」
「あれはいつだったか…多分先生と会ってすぐの事だった…。兄貴の部屋で筝を弾いたことがあったろう?それを偶然聞いてしまってな、あの深川で聞いた音と瓜二つだったから驚いてしまった」
「そんな、筝の音だけて決めるのは早計過ぎやしないか?」
「そうも思ったんだが、唄が」
「唄?」
「あそこで歌っていた唄は今まで聞いたことのない曲だった。あの唄はお前しか知らない唄だろう?」
「よく分かったね、あの曲は育ての親が子守唄代わりに歌ってくれた唄なんだ。知らん間に覚えちまった。だから曲名とかも知らないよ」
「多分、兄貴もその事、知っているよな?それがちょっと悔しい」
「仕様がないさ、おそ松とは付き合いが長いんだもの」
「その信頼が悔しい。きっと、あの唄はそういう者にしか聴かせないんだろう?だけどそれで確信したんだ、俺の探していた『お市ちゃん』はお前だと。なんで先生がそんなに詳しかったのかって、そりゃそうだ、本人なんだから!」
「でもその後だっておれに会いに来てたじゃないか『お市ちゃん』を探しに」
「俺はずるいんだ。先生が『お市ちゃん』である事実が嬉しくて、それを口実に先生に会いたかった。きっかけは『お市ちゃん』だったけれど、いつの間にか先生に会いに行くことが目的になっていたんだ。ああでも『お市ちゃん』に嫉妬する先生は可愛かったな……自分自身なのに」
「は、ちょ、おまえ、あのとき褒めてたのって…ほんとうにおれのことだったの?おれはずっとお前を騙していて、なのに……」
するっと唇を撫でられて口を噤む。
そのまま下に伸びてその大きな手がおれの手を握った。
「な、先生、言ったよな?『せいぜい通っておっことしな』って。だからおれは『お市ちゃん』に貢物をしたし、散々会いに行ったぞ?どうだ?俺に『おっこち』てくれるかい?」
まるで、王子が姫君にするように恭しくてのひらを掬う。
てのひらに口づけながら挑戦的に見つめられた。

「……あんたにゃ、負けたよ」

溜息を吐いてもう一度白に沈む。











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