許されないモークシャ3
(だが……一松の前で死んだのは失敗だったな。)
目の前で死んでやれば痛烈な印象を残せるかと思ったのだが。きっと大広間に出る度に私を思い出す。そう確信していた。舞台には悲劇が必要だろ?
そしてドラマチックに演じてやった。実際確かに彼の心に""旦那様""を残すことはできたらしい。だが彼が私の死によってあんなにポロポロ泣いてしまうなんて予想外だった。
あの子は優しい子だから、きっと今以上にいつまでも泣いてくれていたのだろう。

――そして私と同じようにまた逢いたいと願ってくれたんだろ?
すまないな、一松、まだ今世もしばらくお前を離すことは出来そうにない。
(前世は主人と従者なんて身分違いの許されない恋であり、次はまさか血のつながった兄弟とは。)
前以上に厳しい、が、理由もなくあの子と一緒に居られるなら良しとしようか。

スターチスはやはりお前に似合う。

「――どんな障害でさえ、俺とお前を妨げることはできない……そう、俺とお前が出会うのは運命なんだ」







(お前は決して私を忘れない)






※モークシャ:解脱。死の繰り返しなどからの解放(ジャイナ教)
※スターチス:途絶えぬ記憶。紫色の小さな花。
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -