* * * * *


「――と、いうわけで大変申し訳ないんですが……」
「全員集合ってか」
「すみません……」
「さっきから突き刺さる視線はそれか。誠凛さんは随分過保護なこって」
「え、いやそれは貴方が悪い噂ばっか持ってるせいではないかと……」
「あ?なんか言ったか?」
「ナニモイッテナイデース。あ、そうだコレありがとうございました」
「おー。ファンとしてこの終わり方はどうよ?」
「やっぱりこの人の表現はいいですね!……ですがちょっと腑に落ちないところがありまして、」
「あそこだろ?後半部分の」
「そうなんですよ!全体のシナリオとしてはまとまってるんですけど結局細かい伏線回収してませんよね?」
「続きあるかと思ったら普通にエピローグ入ってたし、コレ最終巻だろ?」
「やっぱりまだ完全に完結してないですよね?別シリーズ始まったりするんでしたっけ?」
「まだ告知されてねぇけど続くだろコレ」
「ですよねえ」

また少し話してバニラシェイクを飲む。あ、そういえばまた奢って貰ってもらってしまった。影が薄いボクは順番待ちをしていてもときどき抜かされることがある。それを見かねた花宮さんが毎回買いに行ってくれていたのだが代金を払おうとしても何故か受け取らないことが多く、むしろもっと食えとばかりにハンバーガーを貰ったこともあった。
うーん……やっぱり掴めない人だ。じーっと向かいに座る彼を見ていたら何だよこっち見んなと睨まれてしまった。べっつにーと答えたら余計睨まれてしまった。イケメンのキレ顔こわ。そして鞄から本を出したかと思うとその本で頭を殴られた。角で。

「っ、痛いじゃないですか!本の角は凶器になるし、本が悪くなるからやめなさいって何度言えば……!」
「返す」
「へ?ああ……どうでした?」
「まあ面白かったな、犯人は流石に予想できなかった」
「まさかの人物だったでしょう?」
「なんでお前がドヤ顔してるんだよ」

あ、笑った。珍しい。整った顔はやっぱり笑ってもイケメンなんですねぇ。今の顔写メりたかったです。
おや?後ろのほうがなんだかザワザワしだした気がする。誠凛の皆さんですかね……。
ボクの後ろに視線を向けた花宮さんはにやあといやらしい笑顔を作ると急に真顔になる。なにそれこわい。困惑するボクの顔を固定すると、何故か近づいてきた。え、いきなりどうした?あれ?ちょっと、近くないですか。え、いやいやいや嘘だよね?なにしようとしてんのこの人。あ、睫毛ながーいって違う違う近い近いからほらもうキスできちゃう距離だよ?待ってこの人まさかホモなの?
はっ、まさか体張った嫌がらせとかそういう感じ?
身動き出来ずに花宮さんとの距離がなくなりそうなその瞬間、ぴぴぴー!とホイッスルがめちゃくちゃに鳴り響いた。後ろから聞こえたからやっぱり誠凛ですね。お店に迷惑です、みなさん。

「っだあああ!今すぐ黒子から離れろ花宮あぁああ!」
「……なかなか愛されてるねぇ黒子クン?」
「全く何しようとしてるんですか……」
「なんだ?キスでもされると思ったか?」
「んなわけないでしょうが……ホモですか」
「からかっただけに決まってんだろ、バァカ」
「あ、やっぱり。はー、からかうためだけにホモのフリするとかなかなか体張りますねえ流石です」

ボクが思わずそうこぼすと予想していた言葉の反撃は返って来なかった。あれ?と花宮さんを見ればなにやら悔しそうな顔をして舌打ちをしてらっしゃる。
おや?誠凛のみなさんをドッキリ出来たんだからもっとしてやったり顔をしてもいいと思うのだが。なにか不具合でもあったのだろうか?

「花宮さん?」
「……またいいの買っとく」
「あ、ありがとうございま、」
「……――テツヤ」
「へ……っ!?」
「ふは、またな」

そう言ってさっきと打ってかわって満足そうに笑うとさっさと帰ってしまった。
花宮さんに名前を呼ばれただけなのに柄にもなく照れてしまった。名前なんて滅多に呼ばれないから咄嗟の対応ができなかったんですよ!あの花宮さんだからてっきり苗字すら忘れられてると思ってた。不覚。油断した。


「黒子!大丈夫か!」
「あ、大丈夫ですキスなんてされてませんので」
「そ、そうか……それはよかった」

ざわざわしだした店内を横目に溜息をつく。
今度花宮さんに会ったら真さんかマコちゃんって呼んで馬鹿にしてやる……!
先輩に撫でられながらボクは小さく誓ったのだった。




(不意打ちは卑怯です)



▼ 続きの希望頂いたので続き。
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