Goodbye littleboy
(M*R)



「もう、やめるんだ…!」

少年の悲痛の叫びは主人を持つカラクリには届かない。
セラミカルチタンでできた鋭利な刃が元家庭用少年型ロボットの柔い肌を斬りつける。家庭用お手伝いロボットはこんな争いは望んではいなかった。望むはずがなかったのだ。あの日兄弟機(きょうだい)が暴走しなければ、あの日、自分で闘うことを選ばずにいたら、彼はここに立ってはいなかった。それでも彼は世界を、人類を守るために戦闘用に改造することを拒まなかった。

「なぜ、君はそこまでして破壊活動を進めるんだ!?」
「何故?理由などない。ドクターが望むからそうするまでのこと」
「……っ、そこまでワイリーを慕う理由は何だ!」
「貴様は己の製作者の、産みの親を慕うのに理由を持っているのか?」
「それ、は…」
「己をここに生み出してくれた、それだけで十分な理由になるはずだ。そうだろ?」
「だけど…っ、聡明な君ならば、今、君が行なっていることが何を意味するか分かるはずだろ!」
「人間の都合など我々には関係のないことだ」
「くっ…」
「さぁ闘おう。戦闘用ロボットにここで戦闘を拒む理由などありはしない。俺は貴様のような強者と戦えればそれでいい!!ドクターを止めたいのならばお前はここで止まる理由もないだろう?」

セラミカルチタンで出来た鋭い刃先は少年型のロボットの装甲を無慈悲にも傷つけていく。しかし少年はひたすらにそれを避けるだけでこちらに攻撃をしてこようとはしなかった。
彼は闘いなどしたくは無かったのだ。なるべくならば己の言葉だけで闘いを終わらせたい。力を誇示して得る説得など意味がないのだ。けれど戦闘用に作られたそれらは言論など意味を成さない。

「メタルマン、君は…」
「俺は俺の信念のもと、貴様は貴様の信念のもとここで対峙しているだけだ。構えなければこのメタルブレードが貴様の装甲をどんどん抉っていくぞ」
「それでも僕は、きみを傷つけずにきみを止めたい……!」

家庭用のロボットの優しさ故か、青い子供はいつでも敵の心配すらしていた。全てを赦すそのやさしさを戦闘用ロボットはまだ知らない。知ってはいけない。

「……ロックマン、ひとつ忠告をしておいてやる」
「?」
「甘さと優しさを履き違えるな。貴様のその甘さだけでは世界など到底救えやしないぞ」
「……ッ!」

(そうだ、その眼だ。もっと、俺だけに集中しろ)
(そうすれば、お前はきっと今よりもっと強くなる)

戦闘準備に入った元家庭用のロボットのどこにその速さと正確さと強さを秘めているのか、それは強い意志故か、それとも家庭用を戦闘用に改造した際に何かされたか、気になる所は数え切れないほどある。が、そんなことは今はどうでもいいのだ。

お互いにただ目の前の"敵"を壊すことに集中すればいい。


「――さぁ、いくぞ!」


Battle start!!





▼少年と戦場はとてもときめきますね
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