lottie

部活を終えて、校門に急ごうとしたら、校門に人だかりが出来ていた。
嫌な予感がしてなるべく巻き込まれないようにいつも以上に影を薄くしつつ、ため息ひとつ校門へ向かう。
途中なにやらきゃあきゃあ黄色い声を上げて校門へ駈けていく女子生徒何人かの声が聞こえた。聞こえてしまった。

「マジだって!黄瀬くん!黄瀬涼太!今いるんだって!!」

――……つまり結局の所、嫌な予感は当たるものだ。
例え黄瀬くんが来ていようと関わらなければいい話だから別段気にする必要もないんですけど。
だけど黄瀬くんの目的は、多分、ボクだ。
そして困った事に彼は……。
その時女子の固まりがざわっとどよめいた。

「……?」

思わず顔をあげると、ばちっと音が鳴るほど視線が合ってしまった。

「黒子っち!」

見ている女子が卒倒するほど甘ったるい笑顔を浮かべた彼、黄瀬涼太は周りの子にゴメンネ、と小さく言ってこちらに真っ直ぐ向かって来た。

「相変わらずの人気ですね」
「いやー黒子っち待ってただけなんスけど。困ったッスよー黒子っち全然来ないし!」
「モテすぎて困るなんて一度言ってみたいもんですね…!」
「黒子っち怒ってる!?でもでも俺は黒子っちにモテたいんスよー!!」
「……いいんですか?」
「スルー!?……って何が?」
「彼女たち」

そこで黄瀬くんは一瞬ぽかん、と抜けた顔になった。
接いでようやくああ、という顔になる。どうやら彼の脳内から彼女らは完全に消えていたようだ。
どうなんだそれ。

「いいッス。俺の中の最優先事項は黒子っちッスから」

あまり関わりたくないと思っていたボクとは逆にとにかく一緒に帰りたいらしい黄瀬くんはマジバのシェイク奢るッスからーとボクにとってはぐらりとくる提案を出してきた。奢りなら仕方ない。
黒子っちって割と現金ッスよね、と小さく聞こえたが聞こえないフリをした。
シェイクをずずっと飲みながら通りを歩けばとある書店の店頭に置かれた一冊の雑誌。表紙は見慣れた、ていうか隣にいる男が切なげにこちらを見ていた。そういえば彼はモデルだった。

「……これ、素敵ですね」
「ホントッスか!?これ、テーマが恋愛だったんスけど、なんか好きな人を思って笑えって言われて――……」
「へえ……」

黄瀬くんの好きな人、ですか。でもこんな表情、見ているだけでこちらが辛くなるような歪な笑顔。きゅ、と無意識に拳骨を作っていた。……これは恋愛と言うよりむしろ―…、

「失恋したみたいッスよね」
「、え?」
「最初は黒子っちのこと考えて素直に笑ってた筈なんスけど、黒子っちはまた光見つけちまうし」
「?」
「帝光のときはずっと青峰っちがいたし、誠凜じゃ火神っちがいるし……。俺じゃ駄目なのかなーって考えてたらシャッター切られちゃったッス」
「……えぇと、黄瀬くんはボクをどうしたいんですか」
「えっ!?イヤあの、その、言うんスか?」
「そんな言えないことを……」
「イヤイヤ待って待って黒子っち!違うから!そんなんじゃないから!あー、イヤ、そのちゅーとかしたいッスけど……その、黒子っちに俺をすきになって欲しいス……」
「好きですよ?」
「そうじゃ、なくて、本当に、その……恋愛対象として……」

視線を泳がせる黄瀬くんを見る。そんな目で見ないで!なんてそわそわする黄瀬くんを見る。
思考が追い付いていない、気がする。あれ?

「……黄瀬くんってボクのことすきなんですか?」
「え?」
「……えっ?」
「俺……帝光のときからずっと伝えてるッスよね…?」
「え?」
「えぇえー……」

き、せくんはボク、がすき、だったのか……。いやボクも彼は嫌いじゃないけれど。

「あ、ありがとうございます?」
「なんで疑問系?」
「ボクも嫌いじゃない、ですよ?」
「……あ、ほらまた」
「?」
「ズルいッス黒子っち。そんな曖昧な表現じゃなくて、ちゃんと言って」
「あ、えと……」

嫌いじゃないのは本当なのだ。本当に嫌いじゃなくて、ボクはすきという感情がいまいち分からない。

「黒子っちは俺のことキライッスか?」
「まさか!」
「じゃあ好き?」
「……キライじゃ、ないんです……ボク、よくわからなくて、」
「俺のことはよくわからなくて、でもキライじゃないって、それはスキってことじゃないんスか?」
「あ、そう、ですか……ボクは黄瀬くんが好き……?」

すき、なのか……。

「あ、やっぱり黒子っちストップ。……これじゃただの誘導尋問ッスね」
「……え」
「黒子っちに嫌われてない、ってわかったんでもう大丈夫ッス」
「きせくん……?」

彼は笑った。さっき見た雑誌の表紙のようなあの表情で。雑誌みたいに上手く笑顔が作れていなかったけれど。その下手くそな笑顔は雑誌以上に胸が締め付けられて堪らなかった。

「きせくん……っ」
「今日は黒子っちと帰れて良かったッス、じゃあ…」

彼は行ってしまう。
勝手に言いたいことだけ言って勝手に帰るなんて、そんなの……、そんなのってないでしょう!

「待って下さい黄瀬くん!キミの方がズルいじゃないですか!」
「え?」
「――勝手に言うだけ言って勝手にバイバイですか!ボクはまだキミにボクの答えを言ってないでしょう!?勝手に決め付けないで下さい!ボクは、ボクだってキミの事――」
「黒子っち、待って、待って待ってお願い」
「何ですか」
「ここ、公道ッス」
「……」
「人は少ないッスけど…振られるにしても人前じゃ流石に恥ずいッス…」
「だから……!」

あーもう!公道なんて、関係ないでしょうに。雑誌で既に晒しているんだし、キミのその愛はそんなものじゃ砕けないんでしょう?
泣きそうになるくらいのものがそこにあるんでしょう?

「誘導尋問だっていいんです、ボクは気付いてしまった。ボクの中のキミの存在がどんどん大きくなるのを」
「黒子っち……俺、」
「……ボクは――ボクはキミが好きなんです……っ!」
「……え?え?黒子っち、それ、本当?」
「……ハイ」
「黒子っち、」
「ハイ」
「っ、黒子っちぃいぃい!」
「!?」

……さっきのイケメンはどこへ行った。でれでれ緩い笑顔を向ける黄瀬くんを見る。雑誌には載せられないようなゆっるい顔。


「でもボクはその顔の方が好きですよ」



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▼ 二番煎じ…いや何煎じか分かりませんがきくろでこれは書きたかった…!黄黒ですよ!黒子っちめっちゃ男前だけど黄黒です!


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