俺が生まれたのはお世辞にもでかいとは言えないぶっちゃけ弱小大名とかいう所の御家、の長男坊。所謂跡継ぎって奴だ。
弱小っつってもなんかしらんが城持ってるし、使用人?女中?はそれなりだし、何より俺働かなくても衣食住は全て完備されてるっていう高待遇だ。
この時代はまだ亭主関白精神もあるらしく、普通にしてても服は着せて貰えるし風呂に入ったら洗って貰えるし、お茶くれって言ったら茶菓子と一緒に出てくるで至れり尽くせり。
さらに俺は城主の息子、しかも長男、さらに言えば超カッコいい色男であるからして。
そらもう楽して暮らしたいなんていう煩悩だらけの俺にはまさに最高のシチュエーションだったわけだな、この生まれ変わった世というのは。

「また当主様ったら適当な政を…」
「小国だからまだいいものを…あんな方が一国の主なんて」
「端の村では干ばつが酷いらしいのにその対応も先伸ばすばかりだって…」

ただ、しいていうならば俺の父親になる人物って奴がとてもじゃないが上に立てるような奴ではなかったということだ。
俺のようにカリスマ性もあり頭もよく足も長くて金もあり顔もいいなんて完璧な奴がいるわけがないのは重々承知だが、アレはアレで酷すぎると流石の俺も思ってしまうわけだ。

何故か、そんなもの簡単だ。あの頭の足りていない愚かな父親にこのままこの国を任せていたら適当に適当を重ねている奴のこと、民なんて奴らは簡単に反乱を起こすに決まってる。

反乱を起こす→城攻める→城主を成敗→血縁者である俺、危ない

こんな式はまず回避せねばなるまい、何故ならこんなことが起こった瞬間に俺は今の権力と地位と金を失い働かなくてはいけなくなるからだ。それは嫌だ絶対嫌だ、俺だから畑を耕すような姿も勿論カッコいいだろうが、俺が求めているカッコよさはそんなんじゃないんだ断固拒否するね。

だがしかし聞いてくれ。俺が生まれたのは何を血迷ったのか過去は過去でも戦国時代とかいう波乱万丈なんて目じゃねぇって位に荒れに荒れている時代だったわけだ。下剋上の時代だったわけだ。
忍なんてものも蔓延っているし間者なんていう奴らもいるんだろ。やめろよ、本当やめろよただでさえ色々不便な生活ばっかりだっていうのによ。

そんなんで表舞台なんかに立ちでもしたらアレ、ドラマでやってた暗殺?毒殺?みたいなことばっかり起きるんだよどうせ。出る釘は打たれる?ん?撃ち抜かれる?まぁそんなんだろ。
誰よりも何よりも優秀すぎて誰もがひれ伏すような俺が何かやってみ、一瞬で噂が広がって全国の女の子たち処か老若男女問わずメロメロになっちまうわけなんだよコレが。

そんなことしたら平穏な生活どころじゃない、俺はんなもん望んじゃいないわけなのよ、おわかり?

だからそれを考えたときにまずは身近なものから味方を作って置かないといけないわけよ、本当。
でも表だっては出来ないしないしたくないわけだからさ。

「、と、ちょっと散歩に行ってくる。君たちもそろそろ休憩時間は終わりだろう」
「あら、本当ですわ。名前様と話をしていたら時間を忘れてしまいます」
「また話しに来てもよろしいですか?」
「わ、私も、是非…!」
「はは、いいよ、ただ仕事を終わらせてからね」

調度いい隠れ蓑もあるんだから使わない手はないだろうという話。
それが単純で権力とか地位に目がなくて、でも上に立つような実力もカリスマ性もないからどこかヤキモキしてるような…。それでも上に立つことを諦めないようなしぶとい奴なら。

「父上、名前です、いらっしゃいますか」
「……、何だ」

きっとうんという。きっとはいという。きっと了承の意を示すだろう。
優秀な俺が表にでないで力を尽くすといったらきっと俺が自身の力に恐れ服従する意思を見せたのだと思うかもしれない。
それは非常に俺の自尊心を傷付けるがこれからの煩悩に溢れた自堕落な生活のことを考えたならまだまだお安いことなんだよな。

「…――、父上、少々お話があるのですが」

さ、この俺の素晴らしく素敵な頭脳をかしてあげるんだからさ。
俺に一生、楽させてよね、お父さん。


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