狼娘物語 | ナノ



列車から降りた僕たちは猛スピードで目的地へと走った。無線が通じなかったのだ。それは即ち無線の持ち主の危機を知らせているのと同じこと。
「マテールの亡霊がただの人形だなんて……」未だに信じれないというような表情を浮かべながら呟くモヤシに神田ユウがご丁寧に「イノセンスを使って造られたのなら、ありえない話じゃない」と返していた。僕はその会話を聞いて「人形、一番人の心を表す」狼我を抱きしめる腕に力を込めながら呟く。聞こえないように小さく呟いたつもりだが、どうやらモヤシは地獄耳のようで「何か言いました?」振り返られた。だけどそれはマテールに到着と同時に鳴らされた神田ユウの舌打ちにより中断された。

「トマの無線が通じなかったんで急いでみたが……殺られたな」

独特の鉄のような臭いが鼻をくすぐった。いつまでたっても、どれだけ多くの戦場にいようとも、この臭いには慣れれない。吐き気が襲ってくる。そしてこの空気の冷たさも苦手だ。それに……

「たまりすぎだ……」

イノセンスの所為なのか、AKUMAになってない魂もうじゃうじゃとしている。全てが全て、苦しみでもがくような魂。なかにはファインダー以外の魂もあった。おそらくそれらはこの土地に存在するイノセンスによって縛り付けられている昔ここに住んでいた魂だろう。

「戦争に犠牲は当然だからな。変な仲間意識もつなよ」
「嫌な言い方」
「事実。戦争中、仲間意識持って庇う。馬鹿……」

そう、馬鹿がやることなんだ。エクソシストの全てが正義感を持って存在しているわけじゃない。なかには教団に強制的に巻き込まれた者もいる。僕たちは仲間ごっこをするために集められたのではない。戦争に勝つために集められたのだ。仲間だとか、庇うとか馬鹿げている。僕たちを非難するような目で見るモヤシに対して、僕はそのようなことを冷たい目で言った。
その時どぉん、と馬鹿でかい爆発音がした。爆発先をみると、AKUMAの大群がいた。


 
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