優しい子守歌が聴こえた。 心地よいソプラノで、落ち着く歌声。 いっぱい叫んで傷ついて苦しんで……ズタボロになった心を癒すような子守唄だった。
そして、その歌声と一緒に流れるピアノの音色。 その音色からアレンの必死な叫びが聴こえた。
一緒にホームへ帰るんだ。 仲間を返せ。
その叫びにも似た願いと同時に、ピアノの音色が強くなる。
僕は、今回の戦いでなにも役に立てなかったなあ。別に、誰かの役に立つために戦っていたわけじゃない。でも、大切な人だと認めて戦うことを決めたのに……なにもできなかった。 もっと、僕に力があればよかったのに。 昔から、僕は力をもっていたことを憎んでいた、嫌っていた。こんな力があったせいで、全部めちゃくちゃになったんだって。でも、今は凄く力を求めている。 もう、全てを力のせいにして逃げない。過去に囚われて力を拒絶しない。もっと強くなるんだ。力を知って、力を受け入れて、強くなるんだ。もう、むやみに傷つかない。
「だから、心配そうな顔しないで」
目の前に立つ、不安げなリルに笑いかける。彼女は喋らない。ただただ、心配そうに僕をみつめる。僕が前に進まないと、リルが安心していってくれないのだ。また、捕まってしまう。それは、駄目。
「 」
リルが口を動かす。でも、なにも聞こえない。それは、リルがあちらの世界に引っ張られているから。でも、声が届かなくても、言いたいことはわかった。だから僕は頷く。
「大丈夫。もう、独りにはならないから」
力強く言えば、リルは安心したように微笑む。うっすらと、彼女の身体が透けていき、消えた。 ──もう、彼女と会えることは本当にないのだ 頬に、冷たいものがつたった気がした。
「──独りで無理をしないで」
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