狼娘物語 | ナノ



「あたしを成仏するの?死んでない人を?」
「リルはさ、村の人に凄く好かれてたじゃん。だからさ、もしリルが仮死状態だったとし、医者がその状態を見逃すわけがないと思ったんだ」
「あはは。でもさ、江戸は鎖国してるんだから技術が乏しいんだよ。あの村程度の技術だったら、見逃してもおかしくないんじゃないかな?」

そういわれてしまえば、そうなる。でもさ、じゃあなんでリルの魂はそんなに苦しんでいるのかな?本当は凄く体調が悪いんじゃない?元気そうにみせてるけど、僕の霊眼を誤魔化すことは不可能だよ。

「仮説なんだけどね、リルは確かに病魔に負けて死んだ。そのおかげで村人が僕や夢歌に対する風当たりが強くなった。優しいリルは、安らかに成仏できなかっただろうね。そして、成仏できないままでいるときにリルは千年伯爵に捕まった。天使の子を失った村は千年伯爵の絶好の獲物となるが、もともとノアとしての力を宿していたリルをAKUMAにすることはできなかった。だから、浮遊している魂を捕まえた。千年伯爵にとって幸いだったのが、村の掟で天使の子と悪魔の子は火葬せずに土葬することだった。だから、千年伯爵はリルの肉体を求めて、村を襲わせた。村に誰もいなくなところで、千年伯爵はリルの肉体を掘り起こし、魂と肉体を無理矢理繋ぎ合わせた」
「それだとさあ、花火ちゃんのいう死者は生き返られない。という説が嘘になっちゃうよね?」
「死者は生き返られない。でも誰も無理矢理魂と肉体を繋ぎ合わせてその魂が肉体を動かすことができない、なんて言ってないよ」

でも、それは常人業じゃない。それを行えたのは千年伯爵ほどの力の持ち主だったから。そして、それに魂と肉体が耐えられたのはリルがノアだったから。偶然に偶然が重なりあって出来てしまった不幸な出来事なのだ。

「まあ、仮説なんだけどね」
「凄いね、仮説だけでドンピシャだよ」

ニコッと寂しそうにリルは笑った。あの村を、リルは酷く気味悪がっていた。だから襲わせることに戸惑いはなかったのだと思う。そして、彼女は確信していた。僕は死なないと。でも、夢歌の存在が唯一のブレーキとなっていたはずだ。それでも、彼女が千年伯爵についたのは……いったいなぜ?


 
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