狼娘物語 | ナノ



「どわあああああああああ」落下による驚きと焦りで、皆の叫びが一つになった。このままいくと、最初のほうに引きずり込まれた僕は皆の下敷きになるだろうから、炎架用にストックしてある糸を建物にむかって投げつけ、ぶら下がる。ドタタタと大きな音がしたので、下を見てみると、山のように落ちたリナリーたちがいた。ちなみに一番下のリナリーはアレンの踏ん張りによって潰れていない。
とんっと地面に足をつけて「大丈夫?」と山のようになっている皆に声をかけた。「一人だけ……」「ずるいさあ……」と文句を言われたが、僕はスルーしてリナリーだけを引っ張って助ける。

「なんだこの町は」
「ここ…方舟の中ですよ!」
「なんでンな所にいんだよ」
「知りませんよ」

ゴゴゴゴゴと二人の間に黒い炎がうずまく。こんなところでまで喧嘩なんて暢気だなあ。思っていれば「おっ、おい!?」兎が僕らを呼んだ。

「リナリーの下に変なカボチャがいるさ!」

言うとおり、そこにいたのは変なカボチャがついている傘だった。ちなみに、さきほどの衝撃で潰れているもよう。どこかで、見たことがある気がする。……確か、巻き戻しの街にいたノアがもっていた傘だ。それは、意識を取り戻した瞬間に「はっ。どけレロ、エクソシスト!ぺっ!!」と失礼な言い方で騒ぐ。その瞬間、先ほどまで喧嘩していた二人がピンッときたのか「「お前か…」」目をキラーンッと光らせた。

「スパンといきたくなかったら、ここから出せ。オラ」
「出口はどこですか」
「でっ、出口は無いレロ」

イノセンスによる刀とと爪にはさまれた傘はブルブル怯えながら答える。そして、黒かったカボチャの空洞が光り、【舟は先程、長年の役目を終えて停止しましタ】と語尾にハートがついた、イライラする喋り方をする声が聞こえだした。

【ごくろう様です、レロ。出航です、エクソシスト諸君。お前たちはこの舟と共に黄泉へ渡航いたしまぁース】

カボチャの部分から千年公があらわれた。見えるのは実体じゃないが、声は実物がカボチャを中継して聞こえるのだろう。……あれはホログラムなのかな?攻撃したらダメージもカボチャを中継して伝わらないかなあ。腕を組んで考えているとドン!!と建物が崩れだした。

【危ないですヨ。引っ越しが済んだ場所から崩壊が始まりましタ】
「は!?」
「どういうつもりだ……っ」
【この舟はまもなく次元の狭間に吸収されて消滅しまス。お前たちの科学レベルで分かり易く言うト……──あと3時間。それが、お前たちがこの世界に存在してられる時間でス。
可愛いお嬢さん…良い仲間を持ちましたネェ。こんなにいっぱい来てくれテ…みんながキミと一緒に逝ってくれるかラ、淋しくありませんネ】
「伯爵…っ」
【大丈夫…。誰も悲しい思いをしないよう、キミのいなくなった世界の者たちの涙も止めてあげますからネ】
「……幻破」

ぽつりと呟き、光の刃のようなものがホログラムのような千年公に襲い掛かる。それは見事に直撃し、声が途切れて爆破した。突然のことに「花火……?」と周りがポッカンとしていた。爆風によってなびく髪を押さえてきっとどこかで見ているだろう千年公に喧嘩腰で言う。

「やれるもんならやってみろ、デブ」


 
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