【…………聴こえるかい?アレンくん、花火ちゃん。《方舟》の中に、入れたかい…………?】
アレンが左耳につけた無線機から室長の声が聞こえた。方舟にどうやら無事はいれたようだ。ゆっくりと目をあける。視界に映ったものを認識すると「はれ?」「うわあ」と間抜けな声をあげる僕たち。こちらの状況を見ることができない室長は【は?どうかした!?】と心配していた。
「あ、いえ。予想してたイメージとだいぶ違くて……」 【何が見える?】 「南国のような……白レンガの町がずっと続いています」 【身体は?】 「平気です。進みますよ」 【慎重にね!!迷子にだけはならないでね!!!】
室長の忠告にアレンは思い当たるふしがあるようでビシッと固まっていた。たしか、アレンってアジア支部でも迷子になってたよね。でも、方舟に迷子とかあるのだろうか。道しるべもない道だから、関係ない気がする。
「みんなは、大丈夫でしょうか……」
唐突にアレンが聞いた。室長は答えない。無言な状態が続いた。皆は、無事か……不安になるよね。「だいじょうぶ、だよ」ゆっくりと、僕が口を開いた。確信をもって、自信をもって大丈夫だと言う。
「怪我はしてるだろうけど、大丈夫。エクソシストは皆タフだから」
エクソシストは、ね。でも、アニタや乗船していた船員は無事じゃないと思う。それを、彼が知ったらどうするのだろうか。目を閉じて、瞼の裏に笑うアニタが浮かんだ。
【不安なときは楽しいことを考えようよ】 「楽しいコト?」 【あれっ思いつかないかい?例えばね…『みんなが帰ってきたら』 まずはおかえりと言って肩をたたくんだ。で、リナリーを思いっきり抱きしめる!】 「はは……」 【アレンくんにはご飯をたくさん食べさせてあげなきゃね。ラビと花火ちゃんはその辺で寝ちゃうだろうから毛布をかけてあげないと。大人組はワインで乾杯したいね。ドンチャン騒いで、眠ってしまえたら最高だね…。そして、少し遅れて神田くんが仏頂面で入ってくるんだ】
室長が言うことは全部想像できた。そんで仏頂面の様子を見てアレンが何かを言う。それで喧嘩が発生して、兎が参戦する。途中で室長が作ったコムリンが登場するのだろう。それを皆で慌てて逃げる。誰も欠けずに、笑ってできたらいいのにね。
「絶対、皆で帰ろう」 「当然です!」
そのために僕たちはむかうんだ、皆のところへ。
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