「「はあ、はあ、はあ……」」
お互い、手を膝につけて息を整える。首筋に汗が通る。背中とかも汗でべたべたして気持ち悪い。どさりと地に尻をつき、壁にもたれかかる。それから少しして「あははは……」と笑い声がもれた。「花火?」と驚くアレンの声が聞こえた。
「ふふ、あははは……」 「ちょ、本当にどうしたんですか?なにか悪いものでも食べました?」 「はははっ。いや、大丈夫。いたって正常」 「正常って……」 「吹っ切れた、だけ。もう、大丈夫」
壁にもたれかかって、すっきりした表情で僕は言う。それは、アレンに言うように、フォーに言うように……自分自身に言うように。アレンと、組み手をやってるあいだに僕は自身のこれからを、考えをまとめた。
「もう、やめた」 「なにが、ですか?」 「無理をすること」
結局、僕は大丈夫じゃなかったんだ。独りでいること。慣れたと思ったのはただ言い聞かせていただけ。本当は全然慣れてなんかいないし、寂しくないわけなかった。独りになっても、なにも変わらなかった。むしろ、無理に独りでいようとして雑念が多くて集中できてなかったのかもしれない。単語で喋るのは、できるだけ人と関わる時間を短くするためだった。でも、それを解読する人が多ければ意味のないことだった。
「はあ、お腹すいた」 「え、急になんですか!?」 「食堂行こ」 「ちょっと、花火!?」
突拍子のない僕の行動にアレンが?を大量に浮かべる。立ち上がって数歩歩いてから後ろを振り返って「アレンも、一緒に行く?」と誘ってみる。アレンは数秒かたまった後に「いいんですか!?」とキラキラ顔を輝かして飛びつく。その反応にむしょうにイラッとした僕は「やっぱ一人で行く」とアレンに背を向けて歩き出す。「あ、ちょっとまってくださいよ!」慌てて追いかけてくるアレンを引き離すように足を速める。「ちょ、花火〜」そんなアレンの声を聞いて、僕は自然と笑みがこぼれた。
心が、軽くなった (はあ、やっとおいついた……) (おそ……) (花火が速いんです!) (はあ、やっぱ一人で食べよう……) (なっ、一緒に食べましょうよ!) (アレン、煩いから)
(なんだ、ちゃんと笑えてるんじゃねえか)
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