僕は目を覚ました。自分が寝ていた部屋を見回して、なぜあんな夢を見たのか納得した。ここは、アジア支部なんだ。ここからはなれて随分たつけど、一目で分かった。できれば近づきたくなかったけど、せっかくきたんだ。僕がむかう場所はひとつだった。むくりと起き上がって、ベッドから降りようとしたら身体が揺らいでどさりと落ちた。そういえば、僕は臓器に穴を開けられたんだっけ。生きていることですら奇跡なのに、そう簡単に動くことはできないか。痛みは、それほどなかった。おそらく、あけられた穴はイノセンスが治してくれたのだろう。壁にもたれながらの移動なら、多少時間はかかるが移動はできる。 僕はとある部屋……胎中室を目指して足を動かした。やっぱり、というか当然そこは立ち入り禁止となっていた。そこで、僕は壁を背中に預けてずるずると腰をおろす。僕は、この部屋にきてなにがしたかったのだろう。多分、あの夢を見たから来てしまったのだろう。心のどこかで、ここにこれば会えると思ったんだ。アルマに。実体じゃなくても、霊体のアルマに会えるかもって思ったんだ。いなかったけど。
「はあ、戻らないと」
ため息を吐いて、重い腰をあげる。あのときできた怪我で、相当な消耗をしている。身体が上手く動くか不安だ。ただでさえ、ここまでくるので息切れをしているのだ。結構、やばい気がする。ふらふらと歩いていれば、曲がり角で突然現れた誰かにどんっとぶつかった。相手は走っていたようで、踏ん張りのきかない僕はいとも簡単に飛ばされた。
「す、すみません!!……って、花火!?」 「……アレン?」
ぶつかった相手は、アレンだった。たぶん、アレンもあのノアにやられたのだろう。最後に見たアレンは大ダメージを受けていたから回避できなかったのだろう。ところどころに怪我があるけど、それ以上に目をひいたのが左腕だ。あるはずの場所に、左腕がないのだ。それはつまり、アレンのイノセンスが破壊されたことを記している。
「なに、やってるの?」 「あ、えっと修練所に行こうとしたら迷って……」
だいたい予想はしていました。ここ、広いもんね。おどおどとしているアレンを見て、ため息を一つ吐いて腰をあげる。その行動にアレンはビクッとふるわす。なににびびっているのだというのやら。くるっとアレンに背をむけて歩き出す。「ど、どこに行くんですか?」とか言うから、ちらっと見て、呆れながら口を開く。
「僕、それなりにここ詳しい。ついておいでよ」
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