いったいどれくらいの時が経ったのだろうか。倒しても、倒しても、数が減らない。むしろ増えるいっぽうである。連れていかれたアレンの行方も気になるけど、さっきちらっとだけどリーが飛んだのみえたので大丈夫だろう。それよりも……
「ここ、切り抜けれるかなあ」 「やっぱ、数が多いさねー」
トンッと降りてきた兎が僕に背中を預けながら言う。いつもならひっつくなとか文句をいうところだが、こうも激戦が長引いてしまうと集中も途切れかけてしまい、背中に隙ができてしまうのでそっちのほうが助かる。
「いったい、なにが目的?」 「さあ、本来は俺たちってみたいなわけでもないようだし……!?」
兎の動きがとまった。その隙を狙って「エクソシストォォッ!!」とAKUMAが突っ込んでくる。グンッと炎架をふるい、それをとめる。なにやってるんだ、文句を言おうと兎をみると彼は信じられないものをみるような目をしている。
「どうした?」 「あっちの空…なんて紅いんさ…!?」
視線をうつせば、紅く染まった空。 それは、燃え上がった山を映した空。
「な、に。あれ……」
見た瞬間。僕はなんとも言えないような吐き気に襲われた。視てしまったのだ。 憎み、悲しみ、苦しみ、寂しがり、蠢き、唸り、叫び、嘆く魂たちが。 それはこの間のノアがまとっていたようなものだった。そして、その中心にいるのは見覚えのある者の魂。あれは、《スーマン・ダーク》の魂だ。なにかが彼の魂を蝕んでいる。見たことがないモノだ。でも、よく知っているモノ。あれは……──イノセンス? どうして、イノセンスが彼を蝕んでいるの?イノセンスが死んだ使徒を蝕むなんて聞いたことがない。
「とが、おち……」
知ってるじゃないか。本部で一度みたじゃないか。神に背き、イノセンスが怒り、イノセンスが殺そうとする。使徒のなりそこないを。彼は、ちゃんとイノセンスの適合者だった。なのに咎落ちになった。……彼は教団を裏切ったのだ。
「ラビ!!」 「へ!?(花火に名前で呼ばれた!?)」 「アニタたち、ちゃんと守っといて!!」 「は!?ちょ、花火!!」
とても、嫌な予感がする。急いでいかないと、なにかが手遅れになってしまう気がする。 気がつけば、僕は船から飛び降りて駆け出していた。
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