「いらっしゃいませ、エクソシスト様方。ここの店主のアニタと申します」
髪飾りをシャラン、シャンと鳴らせ、ほんの少し首をかしげ、微笑んで名乗る美女。彼女の容姿は妖艶という言葉が当てはまるもので、皆頬を染めていた。同じ女であるリーですらだ。そのなか、僕はそれはそれは不機嫌な面だったのだろう。彼女はクスリと笑って、「お久しぶりですね」と僕にむかっていう。
「せっかく、忠告。どーすんだ」 「ふふ。相変わらずのツンデレ具合かしら?」 「誰が。クロス師匠、言葉、鵜呑み、駄目」
相変わらず煌びやかな備品に目をむけながら答えると、彼女は眉をさげて僕を心配そうにみつめる。クロス師匠の野郎、絶対アジア支部でのできごと話したな。余計なことを……。そこで、おずおずとアレンが「知り合い、ですか?」と聞いてきた。僕は答えない。だから代わりに彼女が答えた。
「昔、クロス様がここにいらしたときに知り合ったのです」 「そういう話、いらない。さっさと話して、船貸して」 「え、船?どうしてですか」 「あの馬鹿師匠、長期滞在しない。出発済み」
江戸を目前にした国で滞在しているわけないじゃない。僕は一刻も早く、彼女の前から、この店から……あのできごとがあったアジア支部のある国からでていきたいんだ。その意思を読み取ったのか、彼女は口を開いた。
「彼女の言うとおり。申し訳ないのですが、クロス様はもう、ここにおりません」 『え?』 「旅立たれました、八日ほど前に。そして……」
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