ぱちんっ、何かが弾けたように目を開いた。深くかぶっていたはずのフードが取れていて視界が広かった。目の前には僕が急に目を開いたことを吃驚したのか驚いた表情を浮かべているリーがいた。「だ、大丈夫?」ようやく開いた言葉がそれだった。「なにが?」と怪訝に尋ねれば「泣いてたから……」と指摘されて初めて頬が濡れていることに気がついた。
「泣いてたんだ……」 「うん、何か悪い夢でも見たの?」
その質問に僕は先程まで見ていた夢を思い出した。とてもとても懐かしい夢。悪い夢ではない。そう答えるように僕は首を横に振る。それを見てリーは安堵したように「よかった」と呟いたので「何故?」と思わず聞き返した。
「なんでって……」 「いつも思う。何故そこまで気にする?」 「だって私たちなか」「仲間?勝手に仲間にしないで」
冷たい声で否定するとリーは目に見えるように傷ついた。だけど僕は言葉をとめない。多分、さっき見ていた夢の所為だろう。僕の仲間とか、大切とかの否定意識が強まっている。
「仲間、仲間、仲間って煩いんだよ、君たち。黒の教団にいる皆が全員大切な仲間とかいう綺麗事をさ、僕の前で吐かないでくれる。べたべたべたべたとさ、馴れ合いをするために僕はエクソシストをしてるわけじゃないんだよ。仲間ごっこはよそでやってよ。凄く迷惑。だいたい君、なんで本部にいてへらへら笑ってられるわけ?気持ち悪いんだよ」
そこまで言って僕はしまったと思って言葉を止めた。でも後悔しても遅く、リーは泣きそうな顔をする。「ごめん」と謝るが、最後の言葉は謝って許されるようなことではない。リーはイノセンスの適合者だと発覚されてからは教団本部に無理矢理連れられては監禁のようなことをされていたのだ。思い出したくない過去を思い出させたことになる。「どうして……っ」今にも涙をこぼしそうなリーは必死に声を出す。
「どうしていつもそうやって、花火は一人でいようとするの?」
僕の勝手でしょ。その言葉を飲み込む。だって今ここで責めるようなことを言えば彼女は泣くだろう。別に泣かれてもいいんだけど、その後が面倒だから嫌だ。
「なんで私たちを頼ってくれないの?独りで全部背負おうなんてしないでよ!!」 「僕がなにをどうしてようと勝手でしょ。何も知らないくせに偉そうなこと言わないで」
言っておくが、僕は面倒が嫌いなだけであり、そこまで我慢強くはない。まあ、今まで僕と一緒にいた面子が面子なのでしかたがないと思う。だから泣かさないように我慢しようとしたがそれは数分の我慢に終わった。僕の反撃の声にリーは吃驚したような表情を浮かべていた。だが、次の瞬間リーもきっと僕を見て負けずと反撃をしてくる。
「じゃあ話してよ!!」 「話す理由がない」 「あるわよ!!私は花火が心配なの!!」 「誰も心配してくれなんて頼んでない」 「頼まれたわよ!!」 「はぁ!?誰に!」 「神田によ!でも私だって頼まれなくても心配するわよ!!」
リーから出てきた考えもしなかった名前に「ちょっと待て」と怒るリーを止めた。それでどうやら彼女も我に返ったようで、しまったという表情を浮かべた。が、言ってしまった言葉を消去することは不可能だ。
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