狼娘物語 | ナノ



小さい子供たちがくすくす笑いながら雑談している。女の子が二人、男の子が一人。幼い子はまだ異性という概念が芽生えていないので不思議ではない光景。だが、その村では異様で異常。あってはいけない組み合わせ。

「例えやけどな、お前等が《悪魔の子》と《天使の子》と呼ばれてるとするな」
「例えばじゃなくて事実ね」
「急に何?」

この光景が村では許されない理由。それは二人の女の子は《天使の子》と呼ばれ、崇められ大切にされる存在と《悪魔の子》と呼ばれ、邪険にされ忌み嫌われる存在だからだ。そんな二人が一緒にいるというのは村人にとっては許せないことなのだ。この場合、全ての文句が悪魔の子と呼ばれるほうに飛び、天使の子は「何も悪さをされてないか?」と異様な心配をされる。男の子はただの村の子供であり、悪魔の子といれば距離を置かれ、天使の子といれば無礼だと怒られる。極々普通の子だ。だが、子供たち三人にとっては大切な親友であり、かけがえのない存在だから村から離れた、自分たち以外は知らない秘密の場所で遊んでいる。

「俺から見ればその立ち位置は逆やと思うさかい」
「つまり、あたしが悪魔だといいたいのね?いい度胸ね。表にでなさい」
「いや、ここ表やからな」
「比喩表現よ!!そんなことも分からないの?」
「いや、普通俺等の年齢じゃ知らんやろ」
「まあ、あたしは英才教育されてるからね」
「自慢かいな」
「でも、英才教育されても馬鹿だよね」
「うわっ!ひっどい!でも言ったのが花火ちゃんだから許す!」

ハートを飛ばしながら言われて迷惑そうな表情を浮かべる。それでも「俺やったら?」「ぶっ飛ばす」「ひでぇ!」と漫才のような掛け合いを見てくすくすと笑う。それを見れば二人とも「「花火/花火ちゃんが笑った!!」」と嬉しそうな表情を浮かべる。

「でも、悪魔の子は僕でいいよ」
「は、なんでや?」
「だって、僕が悪魔の子と呼ばれてるかぎり僕以外の子が忌み嫌われる理由はないでしょ?辛い思いをするのは僕だけでいいよ」
「「それはダメ!!」」

鬼のような形相で怒鳴られてびくっと肩を揺らし、二人をきょとんと見つめる。その反応を見ながら二人は悪魔の子などと言っては彼女は虐める村人に対して怒りだす。

「だいたいね!なんでこんなに可愛くて可愛くてかっわいー花火ちゃんが悪魔の子とか言われないといけないわけ!?どちらかといえば天使のように愛らしい子じゃない!!」
「いや、悪魔は悪魔でも小悪魔という意味なら納得できるで?無自覚なのに可愛い行動をするんやからな」
「確かにそれは納得できるわ!でもやっぱり許せん!」
「せやな!なんで望んで持ったわけでない能力の所為で花火が呪われたとか言われなあかんのや!?」
「「ほんっと、ふざけんな!!」」

子供にここまで言われている村人の大人はもう大人として失格だろう。だが、この二人もその大人の中で育った子供だ。そんな中で芯のもって真っ直ぐ育ったのは素晴らしいと言えるだろう。「え、でも僕慣れたよ。それにやっぱしかたがない……」と、村人を庇おうと声を出せば「慣れるんやない!」「しかたがなくない!!」と噛み付かれる。

「だけど…そのおかげで僕は二人の大切な人だと思えるよ」
「うっ……確かにそれは嬉しいけど」
「やっぱり花火が傷つくのは嫌やわ……」
「でも、傷つけられても二人が怒ってくれるから僕は嬉しい」

にこりと控えめに微笑みながら言われれば二人は口を閉ざすしかなかった。

「だからさ、村の人悪く言うのやめよ?陰でこそこそ言うのは僕があの人たちにやられてることと一緒だよ」

「ねっ」と宥めるように言う彼女に対して二人は目の前の少女の優しさに胸が痛んだ。何もしていない、産まれただけで存在を否定までされているのに庇う幼すぎる少女。それなのに庇う様子に、彼女がどんな気持ちで耐えているのか、二人は知らない。どれだけ自分が立場を代わってあげれたと思ったことか。

「うーっ、やっぱりあたしは花火ちゃんが大好きだ!!」
「俺もや!俺も花火が大好きや!!」
「うん!僕も二人が大好き!」
「「きゅんっ!!」」

子供なのに子供らしさを奪った村。でもそんな村だからこそ、三人はお互いの大切さを身に染みて感じていた。三人は誰一人として欠けてはいけない存在だと、幼い、まだ二桁…否、5年とも生きていない子供の内から実感している。そんなことをさせる運命はなんとも非情なのものだ。



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