狼娘物語 | ナノ



数十分後、戦闘が終わった。辺りは煙がたち、破壊されてばかりだ。舞う砂埃が目にはいって少し痛い。

「何体壊った?」
「30…くらい」
「あ、オレ勝った。37体だもん」
「じゃあ、僕上。43体」

数だけやけに多くてちょっと疲れた。やっぱりあの時の疲労が大きい。

「合わせて110ちょいか…単純にオレらだけに向けられた襲撃だな。お前とリナリー、花火が負傷してるのを狙ってか……はたまた、なにか別の目的か……」
「!それってもしかして……」

アレンが何か思いついたように僕を見た。どうやら考えてることは同じようだ。やれやれ、あの子は本当に諦めが悪い。その粘り強さに負けて僕はリルに心を許したんだけどね。

「僕が相手したの、レベル2居た。きっとリルからの命……」
「リル?」
「ノア一族の一人です。花火を千年伯爵側に引き込もうとしていて……」

余程驚いたのか、兎が「は!?」勢いよく飛び上がった。なんだ、話聞いてなかったんだ。そのことにちょっと吃驚だよ。

「それってどういうことさ!」
「リルは僕の幼馴染…一回死んでるけどね」

きっとあの子は僕のこと諦めないんだよな。むしろ諦めたら怖い。いや、諦めてほしいんだけどね。

「アレン」
「なんですか?」
「僕はリルを殺す気で戦うよ。じゃないともっと沢山の人間が死ぬ。相手が人間なんて関係ない。僕達の敵はアクマだけじゃない、千年伯爵なんだよ」

千年公側にいるものは人間だろうとなんどろうと敵なんだ。……だから幼馴染とか関係なく…せめてリルは僕の手で倒さないといけないんだ。

「人間だからって戸惑うなら自害すればいい」

邪魔なだけだから。

「……大丈夫ですよ。覚悟、決めましたから」
「そ……」

正直、これで本当に自害されたら困った。クロス師匠になにされるか分かったもんじゃない。14番目がいなくなるとかこの戦争かなり不利になること間違いなしなんだからね。

「…大丈夫かな、病院」
「きっと、危険。でも、ブックマン居る」

だけど…やっぱり心配だ。ブックマン一人で寝ているリーと力のない室長二人、庇いながら戦うとか難しいだろ。

「痛て!!」
「ダイジョウブか?」
「アレン、不完治」
「…僕もラビたちみたいに装備型の武器がよかったな」

装備型は壊れるリスクが高いんだけどな……。というより僕は装備型じゃないけどね。僕の血がイノセンスで、そのイノセンスが結晶となって装備型のような形をしてるだけだからね。

「病院て、あっちの方だよな」
「え…うん、多分」

あれ、なんか凄く嫌な予感……。「ここ握って」という兎に「僕、走る」と断るが「遠慮すんなって」と言われて兎にひょいっと担がれた。あ、あ、あ、これからの行動か安易に目に浮かぶよ。嫌だよ、助けて。泣きたい、泣き叫びたい。「放せ」と抵抗するが、兎は聞く耳もたず「大槌小槌…」とイノセンスを発動し始めた。

「いっ……」
「伸」
「うわあああ!?」
「病院まで伸伸伸ーんっ!!」
「いやああああっ!!!」

絶叫系ダメなんだ!僕は怖いものと絶叫系は嫌いなんだ!!あんなものこの世になくていいよと思うくらい駄目なんだよ!!
ドパンッ数秒後、病院の天井を破壊して院内に入った。

「アハハハ、悪い!これ便利なんだけどブレーキの加減がちょい難しいんだなぁ。でも、気持ちよかったろ花火、アレン」

気持ちいいわけが……

「気持ちいわけ、ない!馬鹿兎!!!」
「へっ?」
「小僧ども……」
「ひっ……」

兎のイノセンスの絶叫系も怖かったが、怒ったブックマンの顔もゾンビ的みたいだ。

「もう、嫌だ……」

こんなことならリルのもとに行く方がマシだと、少しだけ考えた僕が憎い。そしてそれ以上にそんなことを思わせるような出来事を連発させた兎が憎い。


決めた覚悟

(怖い、ブックマン怖い)
(花火大丈夫?)
(リー目覚め、遅い。おかげで怖い目沢山)
(ご、ごめん……)
(もう嫌……。兎大嫌い)
(ッガーン!それってかなり酷いさ!!)


 
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