「雪」 「頼むから単語だけっつーのやめてくれさ」 「兎、邪魔」 「ヒデェ!」 「花火は雪が好きなんですか?」 「……うん」 「なんか扱い違うさ!」
それは日頃の行いだ。……アレンもあまり良い印象じゃなけど。心の中で付けたしをしながらしゃがみ込み、雪を手の平で掬うとひんやりとして冷たかった。
「トシいくつ?」 「15くらい」 「あ、オレお兄さん。18だもん。しっかし15ねェ〜。白髪のせいかもっと老けて見えんぜ。…ってか15っつーことは花火と同い年さね」 「え、花火って15歳なんですか?」 「悪い?」
「いえ……」と言葉を濁らすアレンだが、彼の言いたいことは十分伝わり、ムカついて睨んだ。「気をつけるさ、花火にチビとかは禁句だかんな」と余計なことを付け足す兎に「聞こえてる」と冷たく言う。小さくて悪かったな。どうせ僕は150cmしかないよ。
「あははは……。あ、オレのことラビでいいから。Jr,って呼ぶ奴もいるけど。アレンのことは《モヤシ》って呼んでいい?」 「は?」
凄い形相になり、アレンは持っていた雪玉を破壊した。笑いながら兎が「だってユウがそう呼んでいたぜ」言うので出てきた名前に思わず雪玉を握りつぶした。
「ユウ?」 「あれ?お前、知らねーの?神田の下の名前。神田ユウっつーんだぜ、アイツ」 「そうなんだ。知らなかったや、皆《神田》って呼ぶから」
僕が神田ユウってフルネームで呼んでるのに知らなかったんだ……。どれだけ鈍いんだ。あ、コイツ変なところで洞察力がないんだよね。
「今度呼んでやれよ。目ン玉カッて見開くぜ、きっと」 「自殺行為」 「アイツが名前で呼ぶの許してる奴って花火だけなんだよな」 「え?」 「僕、名前呼んでない」 「フルネームで呼んでるじゃん」
あれは嫌がらせだ。それに、できることなら事情を何も知らない奴がアイツの名前を呼ぶのはやめてあげてほしい。それはただたんにアイツのことを思ってとかじゃなくて、あの悲劇の出来事を思い出させてあげてほしくないだけだ。
「そういえば初めての任務の時も呼んでたような……」 「オレの時は一々怒鳴るくせに花火の時はなんにも言わねーんだぜ」 「僕の名前、気安く呼ぶな」 「こっちも名前で呼ぶと怒るしよ……。本当に似たもの同志なんさぶっ!」
ボフリッ聞き捨てならない言葉が聞こえたので、顔面に向けて思い切り雪玉を投げた。
「兎…もう一回言ってくれる?」 「い、いやぁ…花火は相変わらず可愛いざっ゙」
無言で石ころ入り雪玉を投げた。雪合戦で石ころ入りの雪玉を投げるって幼い頃よくやったよね。僕も過去に何回かやった記憶あるよ。
「神田ユウと似るくらいなら村人に忌み子として嫌われるほうがマシだ」 ((そこまで嫌なのか!))
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