「落ち着いて。大丈夫、花火ちゃんは独りじゃないから」 「あっ……」
後ろから抱きしめられ、耳元で囁かれた。それはパニックに陥った僕を落ち着かせる声。
「大丈夫。霊眼は花火ちゃんを選んだんだから落ち着けば発動を止められる。独りじゃないよ、あたしが居るよ」
ギュッと抱きしめる力を強められ、僕は落ち着きを取り戻し霊眼の発動を止めた。だけど呼吸はまだ正常に戻らなく、肩で息をする。
「どういうつもりかな?ロード」 「ヤッベー、滅茶苦茶怒ってる感じ?」 「花火ちゃんに霊眼発動させるようなことしないでって言ったよねぇ?過去最大の力持つから先代と違って姿だけじゃなく、声や恨みも鮮明に聞こえちゃうから過去を抉りかえすことしないでって言ったよね?」 「ゴメンゴメン、ほんの遊び心でさぁー」
軽く謝るロードに対し彼女は殺気を漏らしながらドゴッと、ロードからわずか5cmほど離れた場所の壁が破壊された。
「ロード」 「ゴメンナサイ」 「ったく……。花火ちゃん大丈夫ー?」
パシンッ差し伸ばされた手を僕は叩き退けた。「え……」と目を見開いて驚く彼女を僕は睨みつけ、「君は何?」と聞く。
「何って……あたしは花火ちゃんの幼馴染の……」 「僕の幼馴染と言える人間は死んだ」
死んだはずの人間はどれだけ願っても決して蘇らないんだ。古から、どれだけ多くの人が望んだこと。愛する人が…大切な人が蘇ることだ。だけどどれだけ蘇生術を開発しても、どれだけ知識を得ても、それを可能にすることができない。そしてできたものが悲劇の産物、AKUMAだ。
「でもあたしはここに居るよ」 「だけど君はアクマじゃない」 「……折角幼馴染と再会なのにそんなこと言わないでよー」
幼馴染との再会?喜べるわけがない。だって…
「僕の幼馴染のリルと彼はずっと前に死んだ!なのになんで姿も声も性格も…すべてリルと同じなの!」 「「!?」」
それを示すのはつまり死者の蘇り。そんなことがありえない。ありえていいはずがない。
「んっとねー、つまりあたしは《ノア》だから生きてるっというかなんというか…難しいんだよねー」 「……」 「まっ、他でもない花火ちゃんの質問だから答えるよ!あたしは確かに病気で死んだよ。だけどあたしや花火ちゃんは死んでも絶対に火葬されないのは知ってるよね」
《悪魔の子》や《天使の子》の存在は絶対に火葬してはならない。それが僕たちの村の掟だった。
「つ・ま・り、あたしはノアだから超人的な回復力で蘇生したってわけ」 「そんなことありえない……」 「でも事実、あたしは生きている。ま、どうでもいいんだよ。それより花火ちゃん」
昔と変わらない笑顔でリルは僕の名前を呼んだ。それだけで僕は泣きたくなる。だって姿は昔から成長しただけで残りは全て変わらない彼女。大切な幼馴染なんだ。
「あの日以来ずっと独りで居たんだよね?独りぼっちが大嫌いな花火ちゃんなのにずっと、ずーっと独りだったんだよね?」 「別に独りは嫌いじゃない」 「嘘はダメだよー。ねぇ、花火ちゃん…あたしと一緒に千年公のところに行こうよ」 「は?」
突然のことに理解できなく戸惑っているが、リルは容赦なく続ける。
「千年公はいいって言ってるからさ、一緒に行こうよ。そしたら昔みたいに一緒にいれるし、独りじゃなくてすむよ」 「独りじゃない……」 「花火ダメですよ!!」 「そんなこと絶対にダメよ!!」 「うるさいなぁ。外野は黙ってて」
ギロッとリルがアレンたちを睨んだ。そして、数秒の沈黙が続いた。
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