アレンが大道芸をやってるところの少し遠い建物の屋根からアレンを見ているとボールやらナイフやら色々お手玉のように扱っていて驚いた。どれくらいって僕が思わず「すご……」と呟きをもらすくらい。
「伊達に借金地獄を潜り抜けてきたわけじゃないんだ……」
カボチャの被り物が様になっているというか、ミランダの魔女姿がシャレにならないくらい怖いというか、なんというか……近づきたくない。この一言に限る。溜め息を吐いて空を見上げると少し曇っていて、どこか嫌な予感をさせた。なんか一雨きそうだよね。あ、でもこの街は延々と晴れの10月9日を維持しているのだからそれはないか。空を見上げながら考えているとゾクッ嫌な視線を感じた。「!?」驚いて振り返るがなにも居なかった。
「この街、なんか嫌……」
この街に来てからずっと嫌な胸騒ぎが止まらない。正確にはこの街からじゃなくって、教団壊滅未遂事件の夜からだ。
「何だと!!!売り上げをスリに盗られただと!?」 「本当、不幸体質……」
折角順調にいってたのにスられるなんて……。どれだけ注意力散乱させてるんだよ。さすがにここまでくる同情というものをしたくなる。
「役立たず」
男が一言、ロットーに吐き捨てた。それを僕はただ冷たく見るだけだった。同情はするけど何もする気にならない。心優しい子なら「頑張ってる人にそんなこと言うなんて最低!」とか怒鳴りつけるかもしれないけど生憎、僕は優しくない。
「へーっ、冷たく見捨てちゃうんだー」 「!?」
突然背後から声がしたので振り返り、僕は目を見開いた。僕の様子を見て彼女はにこにこと笑いながら言葉を続ける
「変わっちゃったんだねー。昔の花火ちゃんなら他人だろうと関係なく飛び掛っただろうにー」 「な、なんで……」
僕が困惑していると、彼女は昔と変わらない笑顔を浮かべた。そして「久しぶりだね!花火ちゃん!!元気だった?」と元気よさげに挨拶をしてきた。「どうして、君が……」さらに困惑する僕。それに対して彼女はすまなさそうに眉を下げた。
「えへへ、ごめんね花火ちゃん。花火ちゃんは全部背負って…独りぼっちがなにより嫌いなのに独りで生きてきたのにあたしはのうのうと生きちゃって……」 「答えて」
僕の質問を彼女は無視して自分の言いたいことだけを言った。
「大丈夫、もう独りにしないよ♪彼等もね、花火ちゃんのこと待ってるんだよ」
カツンッと足音をたてて僕に近づいた。離れようとしたけど、足が動かなく、彼女が僕の頭に手を添えても抵抗が出来ない。
「うっ……」
段々視界が捩れ、暗くなり、抵抗の術もなく意識を手放すことになった。
「大丈夫、もう独りにしないから……。ずっと、ずーっと一緒だから」
意識が完全になくなる前に、彼女がそう言ったのを僕は聞き逃さなかった。
想定外の人間
(えへへ、拉致完了ー。なんちゃってー♪) (へぇ、コイツが例のねぇ……。結構可愛いじゃん) (ロードダメだよーっ。花火ちゃんはあたしのなんだから!!) (お前に執着もたれる奴って災難だよなぁ) (えっへー、でもあたしが執着するのは花火ちゃんだけだもん♪)
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