「私、ホントに何も知らないのよ…この街が勝手におかしくなったの。なんで私が狙われなくちゃいけないの…?」
呪詛かと思うような呟きを目覚ましに僕は目を覚ました。寝起きに呪詛とか最悪だ。僕が元気なら思わず叫んでいる。誰だよいったい。確認しようにも身体が起き上がらないので、首だけでその声の主を見てみると思わず悲鳴をあげそうになった。それでも必死にその悲鳴を噛み殺した僕は偉いと思う。
「私が何をしたってのよぉぉ〜〜。もう嫌、もう何もかもイヤぁぁ〜」
寒気が起きた。本当に彼女はこの世の者なのだろうかと一瞬錯覚してしまうほど暗いオーラを出している。いや、人間なんだけどね。霊眼が識別してるから間違いがない。でもそれすら超越しちゃいそうな怖さ。リアルでホラー映画を見ているみたいだ。
「ミ、ミランダさん」 「私…は何も出来ないの!!貴方達凄い力持った人達なんでしょ!?だったら貴方達が早くこの街を助けてよ!!!」
それでも段々人に縋って泣き叫ぶ彼女に苛立ったので、重たい身体を無理矢理起こして彼女の顔すれすれに炎架を投げた。目を見開いて驚いている三人。
「花火…何を……」 「力ないことを言い訳にして自分は何もせず、他人に助けを求めるの?楽でいいね」 「私は普通の人間なの!貴方達みたいな凄い力なんて……」 「黙れ」
それでもなお言い訳をしようとする彼女をギロリと睨み、黙らした。
「なんで自分で変わろうとしないの?なんで他人に助けを求めれるの? なんで自分は何もできないなんて言いきれるの?どうして他人に全てを任すの? どうして自分で前に進もうと思わないの?どうしてそんなに簡単に全てが嫌だって言って投げだせるの?」
僕には…僕たちエクソシストにはどれだけ願っても助けを求めれないし、投げだす事もできない。逃げたくても逃げられない窮地にたたされているというのにだ。
「ねぇ、自分が世界で一番不幸だと思ってるの?」 「──っ」 「君は全然不幸なんかじゃないよ。前に進もうとしないから…後ろばかり見てるから上手くいけないだけ。僕から見れば全然不幸じゃない」
むしろ幸せなんだ。全てを奪われる前に助けてもらえるんだから。
「……」 「花火どこ行くの?」 「どこか」
僕は振り返る事もせず部屋を出て行った。最近僕は感情を露わにしすぎだ。特に怒りとか。短気になったとか?うわ、神田ユウに触発されたのか、最悪だぞ。とにかく冷静になろう。外で頭を冷やしてくるんだ。
「……花火の過去とかは全然知らないけど、花火は幼いころから教団に居るんです」 「幼い頃から……」 「花火には家族が居なくて天涯孤独だということは教団の人全員が知ってることなんです。だから怒ったんだと思う。自分は助けを求めたくても求めれなくて、投げだしたくても投げだせないミランダを……」 「私は……」
何かを言おうとして口を開きかけたが、その口は続きを言うことができなかった。 空間が捻じれ、時が戻り、そして朝となる。《巻き戻しの街》と言われる現象が起こった。
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