うつら、うつら、かくんっ。僕はアレンの寝るソファーの後ろで船を漕いでいた。何故自分の部屋に戻らないかというと、先程の騒動のおかげで部屋が壊れたからだ。部屋には別にたいした物を置いてるわけじゃないが、おかげで寝る場所がなくなったのだ。ま、寝る場所は選ばなくとも教団は自室以外煩いから少し困る。でも僕はもう一つ理由があるからここにいる。
「そういえば花火はどこですか?」 「アレン君、花火の名前を呼んでるってことは仲良くなったの?」 「仲良く、かは知らないですけど、名前で呼べって言われたので……」 「(あの花火が?)それって凄いことなのよ。私とか他の皆は名前で呼ぶと睨まれるから。……それに、あの子が人の名前で呼ぶということも凄いのよね。神田はフルネームで微妙だけどお互い何かあれば名前呼びだし……付き合いが長いほうだと思う私ですら未だに苗字で呼ばれてるからね」 「そうなんですか?でもリナリーたちは……」 「私や兄さん、リーバーさんとかは睨まれてもめげずに呼んでるのよ。他の皆は近寄りがたいみたいで、花火を避けてるみたいで……」
ソファーにもたれかかりながら二人の会話を聞いていた。というより、リー。僕と神田ユウを妙な関係だと話すのやめてくれないか。なんか変な誤解うみそうだからさ。
「花火はなんであんなに仲間を拒絶するんですか?」 「それは私たちも分からなくて……」 「……本人、居ないとこ、過去詮索、しないで」
ため息をつきながら言うと、二人は驚いたのか目を丸めていた。本当に気付いてなかったんだね。戦う者が簡単に背後をとられるのは致命的だと思うよ。
「花火、そこにいたの?」 「名前、呼ぶな」 「なんで此処にいるんですか?眠いなら自室で……」 「部屋、破壊。アレン、確認」
面倒で単語で言うと、アレンは数秒首を傾げてから閃いたというように言った。
「つまり、コムリンに部屋を破壊されて眠る場所がなく、そのついでに僕が大丈夫か確認にきた、ってことですか?」
無言で縦に頷いた。ちょっとの間しか居ないのに一字一句間違えずに捉えてくれるとは素晴らしい。ちょっとした拍手ものだよ。
「心配してくれて有難うございます。この通り大丈夫です」 「心配、違う。アレン怪我して使えなくなる、駄目」
時の破壊者が戦えなくなったら千年公をどうするのさ。いや、千年公よりもクロス師匠からの怒りの方が怖い。この場合、僕よりもアレンに矛先がむかうんだろうけど。
「寝る」 「ここで!?」 「部屋、ない」 「だ、だったら私の部屋で寝たら?」 「いい」
リーの部屋で寝ることを拒否し、僕は狼我を抱きしめて眠りについた。
((可愛い……))
僕の寝た姿を見て、二人がそう思ってたとは僕は知らなかった。
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