目を覚ましたときは真っ白な空間の病院だった。起き上がったときには怪我はほとんど完治していた。あれだけ深く傷を負って出血多量だったというのに丈夫だよな、僕の身体。
【いいねぇ、青い空、エメラルドグリーンの海。ベルファヴォーレイタリアン♪】 「だから何だ」
そして、今うざったい巻き毛の室長と電話しながら神田ユウの包帯やらなんやらを取っていた。なんで僕が……!
【"何だ"?フフン♪羨ましいんだいちくしょーめっ!アクマ退治の報告からもう三日!何してんのさ!!ボクなんか皆にコキ使われて外にも出られない…まるで、お城に幽閉されたプリンセ…】 「わめくな。うるせーな」 「自業自得」
普段から仕事をすればいいのに。だいたいなんだよ、プリンセスって。お前男だろ。教団にオカマは二人もいらないよ。キャラ被りはかなり痛いんだって知ってる?
「文句はアイツに言えよ!つか、コムイ!俺、アイツと合わねェ」
動かなくなったララに、モヤシが再びイノセンスを入れて、止まるまで待っていることに神田ユウもご立腹のようだ。
【神田君は誰とも合わないじゃないの……いや、違うねー花火ちゃんとだけは合うんだっけ?】 「ふざけんなっ!!」 「願い下げ。コイツ、合う。地球が滅んでも嫌……」 「てめっ!!」 「いつまでも黒豆扱いする奴、大嫌い……」
僕、小さいの気にしてるのに……。だいたいさ、アンタの背が高いんだよ。男はずるいよ、成長期だとかいって僕じゃ考えられないくらい背が伸びるんだから。
【それでも時々名前で呼んでるんだよねー。花火ちゃんを心配してるときとかさー♪】 「コムイは黙れ!!」
……確かに、僕が危ないときは必ずコイツは僕、名前で呼ぶんだよね。なんだかんだで教団内で一番一緒にいるの、意外とコイツだったりする。僕が教団本部に来る前…アジア支部でまず最初に面識があるんだよね。あれ、つまり僕がクロス師匠以外で初めて会ったエクソシストって神田ユウ?
「考えたらショック……」
軽くへこみながらも神田ユウの包帯を全部をとった。それから点滴を抜いて上着を渡してやるととうとう医者がストップをかけてた。
「世話になったな」 「ありがとうございました……」
お礼を軽く言いながら請求先を渡すと僕たちは病院を抜けた。入院なんていちいちしてられるかって話だよ。
「おい、黒豆……」 「黒豆言うな、神田ユウ」 「だったら俺をフルネームで呼ぶな!」 「だからって、馴れ馴れしく呼ばれるの、嫌。炎狼と呼べ」 「テメェ!ぶった斬る!!」 「断る……、それより用件」 「……コムイがお前にだ」
舌打ちをされながらも、電話を受け取った。話を聞く前に切っちゃ駄目かな、と考えながら電話を耳にあてる。
「……もしもし?」 【花火ちゃんかい?今回は珍しいこと言ったみたいだねー】 「……神田ユウ、切っていいって」 【ギャ──!神田くんに続いて同じことを!!】
アイツと同じ扱い…本気で電話を切りたい。だいたい、無駄が多すぎなんだよ。室長の話って。
【花火ちゃんはこのままアレン君と一緒に教団に戻ってきてね】
……正直あのモヤシと一緒にいるのは不安だ。なんか面倒なんだよね、アイツ。でも、これも任務。
「了解」 【花火ちゃん。君はそろそろ誰かを信用してもいいんだよ。無理に独りにならな……】
それから先の言葉は想像できたのでガチャンッ派手な音をたてて電話を切った。それに対して神田ユウが驚いた表情をしてたけど、気にせず歩いた。 ……僕は無理に独りになってない。自分が望んで独りでいるんだ。余計な口出しをするな。そんな意味を込めて僕は電話を切ったのだ。
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