狼娘物語 | ナノ



「おい!ボヤッとしてないでテメェも……」

隣でなにか言われてるけど、聞こえない。全て雑音にしか聞こえない。ひたすら昔の光景とララとグゾルの瞬間がリピートされている。

(コイツ震えてやがる……)
「ケケケ捕まえた!もうダメだ、もうダメだお前!!何回刺したら死ぬかな〜?」

動かなきゃ、戦わなきゃ。僕はまだ戦える状態だから戦わなきゃ。エクソシストなんだから戦えよ。動けよ。
必死に頭の中で司令を出しているのに体が動かない。動かそうとしても、昔の記憶がフラッシュバックしたことにより、体の震えがとまらない。

「ゴホッ」
「!」

モヤシが血を吐いた。イノセンスの成長に体がおいつかず、リバウンドしたんだ。その隙を見逃すはずがなく「もらった!」AKUMAは攻撃をする。それを神田ユウが庇いにいった。

「っち!この根性なしが…こんな土壇場でヘバってんじゃねェよ!!あの二人を守るとかほざいたのはテメェだろ!!」

……凄い形相で怒鳴ったと思ってたら、クワッという効果音付きで僕のほうを向いた。

「テメェもだ黒豆!!変わりに戦うとかいって震えてるんじゃェ!!今まで俺と任務してたときの威勢はどこいったんだ!!」
「……」
「お前等みたいな甘いやり方は大嫌いだが…口にしたことを守らない奴はもっと嫌いだ!」
「どっちにしろ…嫌いじゃないんですか…」
「別に、アンタ、好かれたくない……」
「ちょっと休憩しただけです」
「少し、感傷に浸ってただけ、馬鹿……」

僕はエクソシスト、任務はイノセンス回収。

「いちいちムカつく奴等だ」

そして、AKUMAを倒すのもエクソシストの使命。

「イノセンス発動……」

助けられなかったとか、どうとか関係ない。ただでさえ僕は霊眼で苦しんでる魂がみえるんだから、悲しみで震えてる場合じゃない。此処でコイツを倒さなきゃ、助けれなかったララとグゾルが報われない。過去がどうの、記憶がどうの言ってる場合じゃないんだ。

「「「消し飛べ!!」」」

各自の攻撃が決まり、AKUMAが飛んでいった。
無理して動いたのが祟ったのだろう。傷口からの出血多量で意識はそこで途切れた。



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