神田ユウが刀をララに向けたとき、「じゃあ僕がなりますよ」モヤシが言った。意志をもって、芯をもった心で真っ直ぐ、彼は続ける。
「僕がこの二人の《犠牲》になればいいですか?」 「──っ!」
"犠牲"その言葉に昔の光景が脳裏に浮かんだ。だけど頭を即座に振ってその光景を打ち消す。
「犠牲ばかりで勝つ戦争なんて虚しいだけですよ!」
その言葉を聞いた途端、モヤシが殴られた。神田ユウの行動は当然といえば当然だ。彼がどんな気持ちで、何を思って犠牲という言葉を口にしているのかはあの出来事を知らない人にとっては理解できないだろう。僕は短い期間だけど、少しの間だけ僕に明るさを出してくれた彼を思い浮かべながら、神田ユウの心境を考えていた。
「とんだ甘さだな、おい……。可哀相なら他人の為に自分を切売りするってか…?」 「犠牲を出す前提なら、僕が戦う……」
自然と言葉が出ていた。「てめ……っ」神田ユウが何か言いたげな顔をするが、続きをいわなかった。僕がそんなことをいうとは予想外なのか、二人から表情に驚きがみえた。でも、それ以上に素直に喋る僕自身が驚いていた。
「その人、もう死ぬ。今まで二人、でも最期、独り。凄く悲しい……」
蘇る過去の記憶。 目の前でたくさんの人の死をむかえる瞬間を目に焼きつけ、ほんの一握りだけど僕が幸せと感じさせてくれた人たちがいなくなり、急に独りになって恐怖した記憶。
「僕の前、独りで死ぬ人はつくらない……」
あんな思い、もう誰にもさせたくない。だから、僕はエクソシストになったんだ。
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