狼娘物語 | ナノ



「俺たちは何の為にここに来た!?」神田ユウの怒声により、僕は目を覚ました。「うるさい……」そう言いながら起き上がると「だ、大丈夫ですか?」モヤシが心配そうな顔で尋ねてきた。お腹に鋭い痛みが奔る。少しでも気を緩めば気絶すること間違いなしの痛みだ。

「おい、黒豆。なんで俺を庇った」
「気分」

間髪いれずにそう答えれば神田ユウの表情から怒りがみえた。しかし、僕は本当の理由なんて言うつもりなんてない。それだけのために自分の過去を言うような奴じゃないんだ。

「てめぇは気分で命を落とそうとするのかよ!?」
「僕、命を落としそうになった状況を作った、油断したアンタ。……それより、僕しっかり庇ったよ……?何故怪我……?」

コイツ、馬鹿だ……。わざわざ庇ったのに怪我したのか……。どれだけ油断したんだよ。僕の怪我が無駄になったじゃんか。どれだけアンタが回復力が高くても、寿命に底があることくらい自覚してるんでしょ。なにやってるんだよ。

「ッチ、おい黒豆、新人がイノセンスとらないから変わりに取れ」

その言葉に僕は人形を…ララをみると、今にも泣きそうな表情をしていた。人形だから泣けないから、尚更苦痛な表情。代わりに泣いてあげたくなるような表情だが、僕は人のために泣けるような心優しいやつじゃないので、代わりに「……嫌」と拒否しておいた。

「テメェも言うのかよ!!」

モヤシと同じ扱いされたのに軽く…いや、かなりショック。何故僕まであんな甘ちゃんと同じレベルにされなければいけないのだ。僕だって見捨てる時は見捨てるというのに。不機嫌になっていると神田ユウが無言で立ち上がり、ララのもとへ歩いた。

「犠牲があるから救いがあるんだよ」

その言葉はきっと、僕とモヤシの二人に言ってるんだろう。



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