「…カ…カ…ンダァ…」 「どうやら、とんだ馬鹿のようだな」
いったい、どうして左右対称のモヤシがいるのかは戦闘の一部始終も見ていない僕には明確な理由がわからない。ただ分かるのはあれが偽者だということ。神田ユウはあれを敵と判断したようで攻撃体勢にはいっていた。
「カ…ン…ダド…ノ…」 「……?」
今、ドノと彼は確かに呟いた。モヤシに化けるならばドノなんて敬称はつけない。僕たちのなかで人の敬称を殿にするのはファインダーのトマだけのはず。
「災厄招来!」
それにさっきから気になっているのだが、僕の近くにいるファインダーの気配が最初と違う気がする。
「界蟲一幻!!!無に還れ!」
神田ユウが左右逆のモヤシに攻撃をしかけると、右の壁からイノセンスの手が現れた。そして破壊された壁からモヤシの登場。「ウォ…ウォーカー殿…」助かった安堵から呟かれた言葉。今度はハッキリ聞き取れた。きっと彼が本当のファインダー、つまり……
「そっちのトマがアクマだ神田!!」
モヤシの言葉と同時にAKUMAが神田ユウに攻撃をしかけた。僕は「馬鹿っ!」叫びながら、考えるより体が動いていた。神田ユウを突き飛ばし、変わりに自分がAKUMAの攻撃を喰らった。僕の身体を突き抜けるAKUMAの腕。
「花火!!」
神田ユウが珍しく僕の名前を呼んでいた。その様子なら大丈夫そう。無事でなによりだ。
「よ…かった……」 「「!?」」
僕の目の前でもう人は死なせたくない。例えそれが関係を作るまいと必死に距離を置いていた相手だとしてもだ。 激痛に耐え切れなくなり、僕の意識は途切れた。
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