狼娘物語 | ナノ



「人形、どっち……!?」

AKUMAから離れて二人に問いただそうと思ったら、男がフードをとっていて素顔を晒しており、それに対して言葉を失った。彼は自虐するような笑いをあげながら「…醜いだろう……」と言う。しかし、どれだけ醜いと言われようが僕にとっては怨念に包まれて浮遊する魂ほど醜いと思えるものがないので冷静に「名前は?」聞けた。

「グゾル…私は…ここに五百年いる。知らぬ道はない」

そういわれて、女の子と男を見比べた。顔はおそらく病気か何かだろう。でも、心はとても真っ直ぐだ。

「……人形の女の子庇うんだ」
「!?」

そういえば、男…グゾルは体を震わせた。「どうしてわかった?」と聞く声には動揺を隠せていなかった。彼は彼女を失いたくないがために嘘をついたのだ。それをあっさりと見破られたのらならば動揺するのも同然か。

「貴方、人間の気配、漂わせてる。でも、その子しない……」

僕の霊眼は騙せない。この眼はこの世の人間のオーラと、すでにこの世には居ない者の魂と、それ以外のものの三つにわける。彼は人間、彼女はそれ以外のものとしてわけられているのだ。

「お願い!私の心臓あげるから!だから…最後までグゾルの傍にいさせて!!」

必死に懇願してくる人形。僕はエクソシスト、イノセンス回収が任務。二人をAKUMAから庇いながら戦い、彼の最期を看取るまで待つなんて難しい。何を優先させるべきだなんて考えなくたってわかる。

「どっちが人形かわかったか?」

モヤシに応戦していた神田ユウが戻ってきた。「モヤシは?」どうやら戦闘中にまたなにかひと悶着あったようで、神田ユウが不機嫌オーラを露わにして「置いていった。一人で突っ走る奴が悪い」と言った。「それより人形はどっちだ?」本当にモヤシのことはどうでもいいようで、すぐに目を二人に向けた。「──っ!」人形が肩を震わせた分かった。

「……そっちの大柄、人形。金髪の子、捨てられてたところ、拾ったみたい……」

平然と嘘を吐く僕に対し神田ユウは疑う素振りを一つも見せなかった。それに対して二人は驚愕の表情を浮かべていた。
僕はエクソシスト、イノセンス回収が任務。
でも、独りになる辛さは知ってる。ずっと二人でいたのに、死ぬ間際に独りぼっちなのは辛い。だから、少しの間だけ時間稼ぎをしてあげる。
その後の行動は君達次第だよ。



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