狼娘物語 | ナノ



つい、勢いでユウにしがみついて泣き騒いでしまった。それに気づき羞恥にいっぱいになったのは時間がどれくらい経ったかわからず、喉の感覚が麻痺してきたころだ。何年も溜め込んでいたものはちょっとやそっとじゃ流れきってくれはしなかったけど、全て流すつもりはなかった。だって、全部流してしまったら僕じゃなくなりそうだったから。しゃっくりをしながら涙を落ち着ける。そして、現在の状況を頭の中で整理する。

Q.今の状況は?
A.ユウの前で泣きじゃくった。

Q.今の格好は?
A.ユウにしがみついて、胸に顔を埋めている。

この二つさえ頭の中にはいったら、十分だった。つまり、とっても恥ずかしくて情けない状態だということだ。泣き声がとまったのを見かねてか、ユウが「もういいのか?」と聞く。別の意味で落ち着いていなく、声がでてこなかったのでコクコクと首を縦に振った。顔を俯かせたまま「あのさ、もう離してもいいよ」と言えば、「ん、」と返ってくるだけで力が緩められなかった。え、なんだこの状況。コイツ、あの神田ユウだよな?いや、確かに昔から不器用だけど優しかったよ。それこそクロス師匠みたいな不器用な優しさ。え、だけどもう僕大丈夫なのになぜ?

「ユウさん?」
「なんだ」
「離してくれませんか?」
「断る」

断られた。なぜ、どうして。コイツはいったいなにがしたいのだ。意味不明な行動に?を大量に浮かべているが、結局答えはでてこなかった。しょうがないので諦めて僕はこの状態でいることにする。普段態度は冷たいくせにユウの体温はとても温かかった。なんというか、落ち着く。ああ、なんか「好きかも」「なにがだ」「ユウに抱きしめられるの」……あれ、なんか今僕とんでもないことを思った気がする。というか、それを質問されて思わず口にした気がする。サアアッと血の気がひいた。僕を抱きしめる力が緩まった。それが、僕はとんでもない発言をしたといこうとの肯定になる。ひいたはずの血の気が一気に戻ってくる。カアアアッと顔が熱くなった。

「うああああっ!か、勘違いすんな!」
「いや、まだ何も言ってねえ」
「ぼ、僕が好きかもと思ったのは人の温もりであって、決してユウの温もりがとかそういうわけじゃない!」
(墓穴掘ってる……)

パニック状態になった僕は自分の発言でどんどん余計なことを口にしているなんて気づかなかった。一言二言余計なことを言うだけ言って、最後は「ユウの馬鹿野郎!!」と自分でも理不尽なことだとわかってながら叫んで、逃げるようにその場を去った。

芽生えだす
(おー、花火おかえりー)
(大丈夫さ?目が赤い……ってか、顔が真っ赤さ)
(うるさい、黙れ)
(しかもめちゃくちゃ不機嫌!?)
(不機嫌?いや、花火は不機嫌じゃないで)
((神田となにかあったのね!/ですね!))


 
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