狼娘物語 | ナノ



アレン・ウォーカー side

退魔の剣によって破壊したはずのティキ・ミックのノアの力。そして、ロードを倒した。あとは前の部屋で残った花火と神田とクロウリーを探せれば全て終ると思った。なのに、ティキは黒いなにかを身に纏い暴れるだけ暴れている。そのせいで、外へ通じる扉が破壊されてしまった。それでも、僕は前に進まなければならない。

「来い…っ!此処からもう…生きて出られないとしても、命が尽きるまで戦ってやる…っ。マナとの約束だ…っ!!」

僕は退魔の剣を構え、ティキを迎え撃とうとした。が、その瞬間に足元の地面が光り出し、大きな穴が開いた。それにより、ティキは吹き飛ばされ、僕は落ちていく。「うわあああっ」もう、崩壊がきたのか!情けない声をあげながら落下していくと、途中で誰かに足をつかまれて落下がとまった。

「なんだこの汚ねぇガキは。少しは見れるようになったかと思ったが…いや、汚ねェ。拾ったときと全然変わらんな、馬鹿弟子」

久しぶりに聞いた低い声。僕を馬鹿弟子と呼ぶのは一人しかいない。逆さまにみえるが、この鎖で縛られた棺。思わず「対アクマ武器…“聖母ノ柩”…!」と声を引きつらせた。つまり、そういうことだ。サーッと顔を青ざめて「お…お久し…ぶり…です」挨拶をする。悪趣味な髑髏の仮面がひいて、顔が露になり「なんだ、その嬉しそうな顔は。落とそうか?」と笑う師匠。相変わらずの傍若無人っぷりだった。任務だったから探したが、できれば会いたくない気持ちが強かった。

「やっとまともな発動が出来るようになったみたいだな」
「えっ…?」
「それにしてもボロボロだな…。ほら…」
「へ?」

師匠らしかぬ行動だった。差し伸べられた手を警戒しながらとろうとすると、ぐわっと団服をつかみ、僕をリナリーたちのところまで投げ飛ばした。「汚ねぇんだよ、馬鹿弟子がっ!!」と酷い罵声までとんできた。

「オラ、貴様もあっちいけ。美しいもんは傍においてやるが、汚ねぇのは俺に近付くな…」
「酷い言われようさ…」

ギロリとラビを睨んで言っていた。副音声に女以外とか聞こえた。師匠の女好きと、暴君っぷりは健在のようだ。ラビがしくしくとこちらにやってきた。それを師匠はもう興味のないものとしている。視線はティキにむいているのだ。ギリッと勢いよく棺に巻かれた鎖をほどく。なにかを唱えると、棺から黒いドレスを着た女性が現れ、歌いだす。聖母ノ加護だ。半円が僕等を包み、ティキの視界から隠す。キョロキョロと辺りを見回すティキに師匠が声をかける。

「ガキ共にはご退席してもらったぜ。いいだろ、別に。なぁ?」

そこで、ぐらっと地面が揺れた。師匠はちっと舌打ちを鳴らして「おい、泣き虫弟子!ここらいったい安定させろ!」と大声で言う。弟子と言われたから一瞬僕のことかと思うが、僕にそんなことはできない。師匠だって僕にむかって言ったわけでないだろう。では、この場でいう弟子というのは?首を傾げていると、地面から宙へと赤と白の服が一瞬だけ通り過ぎる。

「次から次へと人遣いが荒い……」
「つべこべ言わずにやれ!!」
「はあ……。ぐらつく空間に平穏の一時を 安定をあたえよ 広囲結界……空結!」

地面から現れた白と赤の服……巫女服を着た花火はぐるっと宙で方向転換し、地面にむけて唱える。その瞬間、ここらいったい、広範囲を囲うように透明な結界が張られた。それのおかげか、崩壊によってぐらついていた地面がとまった。

「疲れた……」
「お前はそこで待ってろ」
「はーい」

花火は聖母ノ加護によって護られている僕等の横にきて、ちょこんと座った。師匠の能力でガードされてもいないのに、暢気に座ってて大丈夫なのか……花火に話しかけようとしたが、真剣に師匠をみつめている彼女の目が赤く腫れているのに気づいて話しかけられなかった。リナリーとラビも同じようだ。その様子に花火が気づいたのか、「大丈夫だよ」と小さな声で呟いた。僕等は悟る。彼女の幼馴染は……リルはもういないのだ、と。花火を凝視していると煩わしそうに「視線、うっさい」と言われた。それは、いつもどおりの喋り方だったが、少しだけ元気がないように感じ取れた。



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