狼娘物語 | ナノ



「汝に命ずる 我を守る刃となれ! 攻盾っ」

刃のようなものが僕の周りに出現し、リルの攻撃を防ぐ。それからぐるんっと回転してリルのもとへ飛ぶ。「こんなものっ!!」リルは宙を舞うように飛んで避けた。そんな攻防戦が何回も続き、お互いの息があがる。言葉だけでは軽いものに思えるけど、実際はとても激しいものだなのだ。時間も結構経っているのだろう。空間のものが次々と崩壊している。

「ねえ……っ、なんでイノセンス……使わないの…?」
「はあっ、はあっ……言ったでしょ。僕はエクソシストじゃなく……陰陽師として戦う……って!」

普通のノアに対してならそんなの自殺行為かもしれない。でも、リルの場合は肉体と魂が無理矢理繋がっているのだ。つまり僕の勘が正しければ、除霊術とかも有効なはず!「っはあ!」息をついて、突撃する。リルもそれにむかうように走ってくる。

「だいたい、リルだってノアの能力使わないじゃん!」
「花火ちゃんを欲してるのは、ノアのリルじゃない。日本で生まれて、日本で育って、日本で死んだ……夢歌と花火ちゃんの幼馴染のリルだもん!」
「め…っちゃくちゃだ!」

がっと互いの手を掴み、押し合う。もう取っ組み合いだ。さっきから僕等は天瀬家がもっている能力と炎狼家がもっている能力で打ち消しあって取っ組み合うくらいだ。というか、普通の喧嘩だったら僕に勝ち目がないと思うのだが。だって、リルは夢歌としょっちゅう取っ組み合って喧嘩してたんだよ。

「ま、それを横でずっと見てたんだけど…ねっ!」
「〜〜いっ!」

グッと背をそって、勢いをつけて頭突きをかます。その衝撃でバッとリルの手がはなれた。そのまま、僕たちは後退して距離を置く。リルは頭をおさえながら「石頭ぁ!!」と涙をためていた。いや、その台詞はそっくりそのまま返すから。頭突きって捨て身なんだからね。ふう、しかしこのままではキリがない。どうしようか……腕を組んで考えていると「きゃあっ」とリルの叫び声がした。慌てて顔をあげると、空間の崩壊によって地面が消失してリルが空洞の闇へと落ちているところだった。

「リルッ!!」

頭で考えるなんてことをせず、僕は反射的に空洞の闇へと飛び込んで手を伸ばしていた。



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