狼娘物語 | ナノ



「花火ちゃんが考えてること、当ててあげる」
「そんなの、当たるに決まってるじゃん」
「ふふっ。そうだね。なんで、夢歌がいるのに村を襲うことに頷いたか……」

ふわっとリルは宙へ浮いた。思わず「あっ」と声をもらす。リルが消えてしまいそうに感じたからだ。成仏だのなんだの言ってるくせに、実際に本人を目の前にすれば失うのが怖くなった。

「最初はね、絶対首を縦にふるもんか!と決めてたんだよ。気味が悪い村だったけど、あたしに凄くよくしてくれたのは知ってるもん。理由がなんであれ、ね。それに愛情をたくさん注いでくれたお父さんやお母さんもいた。でもね、ずっと見ていてだんだん黒いものが心の中に渦巻いたの。花火ちゃんや夢歌を傷つけるあいつ等を、そこまで庇う必要があるの?って。気づけば、千年公にお願いしてたよ。"あんな村、壊して"って」
「……夢歌がいたのに、どうして?」
「わかんないや。夢歌まで大丈夫、なんて確信はなかったのに……たぶん、あたし自身がもっと生きたいと思ったんだよ。もっと世界を見たいと思ったんだよ。生き返りたい、って願ったんだ」

つまり、一時的に膨れ上がった感情に任せて、リルは頷いたということだ。「後悔は、してないんだ」なんで、そんなこと言うんだ。そのせいでたくさんの人が死んだというのに、どうしてそんなこと言うんだ。後悔してないことを責めてるんじゃない。──泣きながらそんな台詞を言うのを僕は怒ってるのだ。まだ聞きたいことがたくさんあって「リル……っ」口を開くが、空間の崩壊が近づいて建物が崩れだした。

「ねえ、お話は終わりにしようか。時間もないみたいだしさ」
「そう、だね」



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