狼娘物語 | ナノ



「あーあ。村がぐっちゃぐちゃになっちゃったなあ」
「お前の幼馴染なのになんであんなんなんだ」
「……というより、ハイテンションな幼馴染二人でなんでそんなテンション低く育つんですか?」
「えっ!花火ってばまだ幼馴染いるの!?」
「というか、今は花火の幼馴染の話どころじゃないさあ」

竜巻がこちらにむかう前に、僕は守結を周りに張った。これは使い道が二つあり、一つは敵を黒い業火に包み隔離する使い方。もう一つは白く冷たい炎が味方を優しく包み、なにごとの攻撃からも遮断する技。それを見たリルは「なんで庇うんだよ!!」と叫び半分に怒鳴る。

「どうしてそんな奴庇うの!そいつ等がいなくなっちゃえば花火ちゃんはあたしと一緒にいれるじゃん!!なんで、なんで、どうして!?花火ちゃんはあたしが嫌いなの?だから一緒にきてくれないの?」
「嫌いだったら、話を聞こうとしないよ。嫌いだったら、真っ先に攻撃をしかけてる。……嫌いだったら、こんな状態でも戦うことを戸惑ったりなんかしてない」

ポロポロと大粒の涙を流すリルを見て心が痛む。彼女が、どうしてそんなにも僕を求めるのか。それは、彼女を特別視をしなかったから。村の人はリルを天使の子と崇め、奉った。それは、幼い子供から見たらどう思うだろうか。忌み嫌われた僕とはまた違った辛さだったのだろう。まったく正反対で、同じような境遇だったから僕はリルを特別視せずに大切な人と思ったし、リルも僕を嫌わず大切な人だと思ってくれた。が、彼女の僕に対する執着は異常だと、僕自身が一番分かっている。だって、僕とリルを特別視せずにいてくれたのは夢歌もじゃないか。なぜ、夢歌には執着せず、僕だけにするか。気になるけど……それを聞こうとはしない。

「だったら、一緒にきてよ!あたし、花火ちゃんが傷つけられたって聞いたとき、本当に心臓がとまるかと思ったんだよ!咎落ちなんてなんとでもなるから、きてよ!」
「だから、約束したんだって。必ず帰るって」
「そいつ等とでしょ!?ならそいつ等がいなくなっちゃえばいい話じゃない!」
「いや、約束したのはここにいる皆とじゃないよ」

約束は、してないんだ。そう言えばリルは「じゃあ……っ」と悲しそうに、苦しそうにこっちを見た。ちなみに、アレンたちは「約束してないんですか!?」などと騒ぎたてていた。ごめんね、リル。僕はアレンたちと比べれば遥かにリルのほうが大好きだ。でも、それと同じくらい大好きな人がいるって知ってるでしょ?

「約束したんだよ、夢歌と。絶対に生きて帰るって」



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