あのあと、あの場が一気に崩壊した。急いで崩壊の弱いところに避難した僕らは、その場で息を整える。
「どーするよ…。逃げ続けられんのも時間の問題だぜ。伯爵の言う通り、三時間で此処が消滅するならさ」
兎の言葉にカボチャが「あと二時間レロ」と訂正した。つまり、建物を破壊して出口を探した時間とあの男との対話の時間で一時間を使ってしまったというわけだ。この空間は、もうもたないだろう。
「…ロードの能力っていう空間移動は僕らも身に覚えがあります」 「うん」
つまり、四の五の言ってられず渡された鍵を利用するしかないのだ。「しゃーねぇってか」「ち……」敵の情けはできれば借りたくないもの。あまり乗り気ではないが、使うことにした。ゴクリ、誰かが息を呑んだ。
「こ…このドアでいいですかね?」 「どれでもいいんじゃね?」 「とっととやれよ」
得体の知れないものは誰も使いたくないもの。誰が鍵を開けるかジャンケンで決めることになった。負けたのはアレン。しかも、一発で決まった。イカサマは得意なのにジャンケンは弱いのか……。覚悟を決めて、アレンはまだ崩壊していない扉に鍵を差し込む。ボンッと魔法がかかったように、白い扉は派手なものになった。
「絶対脱出!!です」 「おいさ」 「である」 「うん」 「ウッス」
アレンが手をだし、皆がそこに重ねていく。我関せずで参加しようとしない僕とユウにむけて、アレンが「神田〜、花火〜…」と期待するような眼差しで見た。アレン以外の四人も。「やるか」「拒否」と断る。
「ですよね」 「行くぞ」 「さっさと終らせよ」
ギィィィと錆びれた音がして、扉は開いた。徐々に開く扉から光りがもれる。潜り抜けたそのさきには、もう一生見れないと思っていた景色が広がっていた。
一人も欠けずに (脱出するのが目標……か) (ここは、外じゃないですよね?) (異空間は不思議さね……) (……花火、どうした) (ちょっと、ね)
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