狼娘物語 | ナノ



アレンの後ろから鍵を見せびらかした男。どうやら、数名が面識あるようで「「「ビン底!!!」」」白くなりながら指をさして叫んでいた。「なんでここにいんの!?」とか騒いでいる。本当に、あの三人は気づいていないのだろうか。僕は戦闘ができないリナリーとアニタの船にいた男の人を守るように立つ。それを確認したするなり、「そいつ、殺気出しまくってるぜ」ユウが指摘した。ニッとビン底と言われた男は口角をあげて「少年、」ポンッとアレンの頭の上に手を置いた。そして「どうして生きてた…?のっ!!!」ゴンと鈍い音をたてて頭突きをした。
この瞬間に男の正体を僕は悟る。眼鏡が地に落ち、白かった肌が褐色変化する。かきあげられた前髪の下からは額に浮かぶ聖痕が浮かんでいた。

「出口欲しいんだろ?やってもいいぜ?この方舟に出口はもうねぇんだけど、ロードの能力なら作れちゃうんだな」

直後、男の後ろに見覚えのある扉が出現した。あれも巻き戻しの街でみた。たしか、ロードという奴による空間で現れた扉だ。

「ウチのロードはノアで唯一、方舟を使わずに空間移動が出来る能力者でね。ど?あの汽車の続き。此方は“出口”、お前等は“命”と…《戦争の審判者》を賭けて勝負しね?」

笑みを濃くして、男は僕を見た。あの肩書きがあるかぎり殺されない自信あったし、このまま方舟崩壊で見捨てられないとは思っていたけど、賭けの景品に勝手に巻き込まれるのはムカつく。

「僕、アンタに殺されかけてるんだけど」
「いやあ、本当。よかったよー。あのあとさあ、リルにめっちゃくちゃ怒られたの。『イノセンスはともかく、花火ちゃんを傷つけるなんて!』ってね……破壊したイノセンスがなんで復活してるのか気になるけどさ」
「へえ……」
「そんで、そんなキミを愛して愛して病んでしまうリルの頑張りでキミが今、この場でこちら側になってくれるというなら、その子たちは無事に帰してあげてもいいって千年公からお許しがきてるんだよねえ」

……この野郎。リルが僕に対して嘘を吐かないと確信をもっているのを利用しやがった。鍵を使って脱出するよりも、安全性はある。ギリッと唇を噛む。こいつは、最初からこれを狙っていたのか。「で、どうするんだい?」ニヤリと笑みを浮かべて僕の回答を待つ。「僕は……」僕が行けば、皆が助かる。足を動かしたとき、ぐいっと腕を引っ張られた。

「なに、勝手なことしようとしてやがる」
「でも、僕が行けば……!」
「それで、あっちのノアを数人殺ってから自害する気だろ」
「……っ」

なんで、そこまで分かるんだ。バカンダのくせに、そんなところで鋭くなってんな。下を俯いていると、ポンッと頭を叩かれた。見上げれば「花火が背負うことじゃないさ」と笑う兎。

「っと、時間切れみたいだな。ロードの扉とそれに通じる三つの扉の鍵だ。これをやるよ。今度はイカサマなしだぜ?少年」

スルッと指からすりぬけて、鍵が地面むけて落下していく。ドガアッと建物が、男に向かって崩れてきた。「ティッキー!!」「た、建物の下敷きになったである」「死んだか?」様子を窺う僕たち。アイツが、あの程度で死ぬわけがない。キラッと光るものがこちらにむかってきた。パシッとユウがキャッチすると、それは鍵だった。

「エクソシスト狩りはさ…楽しいんだよね。扉は一番高い処に置いておく。崩れる前に辿り着けたら、お前等の勝ちだ」
「ノアは不死だと聞いてますよ。どこがイカサマなしですか」


睨むようにアレンが言う。「…あははははは!!」おかしいというような笑い声に、僕らは眉をひそめる。「なんでそんなことになってんのか知らねぇけど、俺等も人間だよ?少年」ズッと落下した建物を通過して無傷な状態で去っていく。

「死なねぇように見えんのは…お前等が弱いからだよ!!!」



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