「花火……」 「なに?」
リーに呼ばれた。振り返れば汗が凄く、少し苦しそうな様子のリーだった。こちらに到着したとき、ちらっと見えたけどリーは今まともに動ける身体じゃないと僕は悟った。声をできるだけ小さくして話せるようにしてあげたほうがいいだろう。近づいて彼女の前でしゃがみこむとガバッと抱きつかれた。
「よかっ、た」 「……」 「生きててくれて、本当によかった……」
ポロポロと彼女の涙が僕のコートに染みをつくる。彼女もまた、仲間を失うのを恐れている一人なのだ。「心配かけて、ごめん」ぽつりと呟く。リーは首を小さく横に振って「生きててくれたから、いいの」と綺麗に笑った。「あ、それで……」少し、リーの表情が曇った。直感した、彼女はアニタのことを切り出そうとしていると。「言わなくて、いいよ」不安なときとか、皆がしてくれたように僕もリーの頭に手を乗せてみる。ああ、もったいないなあ。凄く綺麗な髪、短くなってる。
「守りきれなくて、ごめんなさい」 「別に、謝らなくていいよ。なにもかも、アニタが決めたことだし」 「これ……アニタさんが」
リーに渡された小さな箱。蓋をあければ、銀色に光る二つの髪どめがはいっていた。これは、アニタの母がつけていたものの色違いだ。アニタが18歳であれを譲り受けるから、おそろいのを探しておくと言ってたんだよね。今はお揃いにする相手も、これを結わえる髪の長さもないのに。「ありがとう」リーにお礼を言って、髪どめを大切に僕は握りしめる。
「また伸ばしやいいだろう」 「ユウほど長ったらしいのも嫌だけどね」 (昔はファーストネームだったけど今呼ばれると慣れねぇ……!)
そうだね。この戦いが終ったらまた伸ばしてみようかな。意図的にじゃないけど鋏をいれないでおくとしようか。肩までついた髪をいじりながら思う。そこで「あっ」と思い出したように声を漏らした。そうだ、僕は彼女に会ったら言っておきたいことがあったんだ。
「言い忘れ」 「どうしたの?」 「教団じゃないからどうかと思ったんだけど……ただいま、リナリー」 「(花火が…私の名前を呼んだ!?しかもただいまって……)……おかえりなさい」
嬉しそうに微笑んだリナリー。そこで、リナリーの下が光った。光りはガッとリナリーを飲み込む。反射的にリナリーの手を掴む。引きずり出そうにも、光りの吸引力が強く、そのまま僕たちは引きずり込まれた。
再会もゆっくりさせてくれない (ねえ、千年公。あの女、あたしが殺していい?) (審判者の彼女以外はご自由にどうゾ) (花火ちゃんに頭撫でてもらったりさあ、名前呼ばれたり……ムカつくムカつくムカつく!原型とどめないぐらいぐっちゃぐちゃにしてやる!!) (女の嫉妬ってこえーんだな……) (女ってより、病んでる子の嫉妬が怖いんだよぉ)
←
▼MENU
| |