狼娘物語 | ナノ



アレンのイノセンスからでてくるマントは便利だった。あれに隠れて、不意打ちで飛び出せばいいかもと思った。だけど、さすがリル。その一瞬を見逃さずに僕だと判別して飛んできた。現在の状況は双方把握済みなので、和気藹々と雑談といけるわけでなく戦闘となった。途中で、リルがぴたっととまり「あー、うん。分かったあ」と口を尖らせて誰かに返事をした。

「ざんねーん。もっと花火ちゃんといたかったけど時間みたい」
「あ、そう。じゃあ早くいけば」
「あれー?ノアのあたしを逃がしていいのぉ?」
「明らかにそっちが有利なこの足場で無理して戦う必要ないでしょ」

放っておいたらどうせ、そっちからくるんだし。すでに戦う気をなくした僕は炎架をヘッドフォンの形状にして首にかけた。くるっとリルに背をむけて「じゃ、次の機会に」と手を振っておく。「へへ、まったねー」とリルは上機嫌に去っていった。まったく、宙を浮いて移動できるなんてチートでしょうが。足場が少ない場所で空中戦が得意な奴と戦うとかどんな無理ゲーだよ。心のなかで悪態をつきながら、アレンたちを探す。見晴らしのよくなった江戸で探すのに、時間はかからなかった。

「ここは一応感動の再会…」
「「うるせェ、刈るぞ」」

兎が果てしなく可哀想な状況だった。きっと、二人が鉢合わせするなり喧嘩してたのだろう。そりゃあもう、マジな殺気をたれながして。リルとバトってる間になんとなく感じ取れていたさ。なんだかんだであの三人組はちょうどいい気がしないでもないけど、さすがにパワーアップしている二人の仲裁は兎に荷が重いだろう。僕は「世話の焼ける……」ため息を一つこぼして言い合う二人の後ろに立った。それから一瞬の躊躇もなく、思いっきりアレンのフードと神田ユウの長ったらしい髪を引っ張る。

「な、なにするんですか!?」
「てめっ、黒豆!!」
「喧嘩してる場合、じゃない」
「首が絞まります!!」
「とっとと放せ!!」

フードと髪を引っ張られた二人の反応は面白かったけど、煩かったので「黙ろうね」ともう一回だけ引っ張っておく。それからパッと手を放せば二人は漫画のように後ろへ倒れた。むろん、二人の後ろに立っていた僕は巻き添えごめんなために素早く回避した。「花火……」「黒豆……」ゆらぁりと立ち上がる二人は怒気を含めて僕を呼ぶが、無視をしてあたりをきょろきょろ見渡す。

「「無視をするな!!」」
「あー、はいはい。話はあとで聞くからまずは合流優先でしょ」

軽くあしらう。この類の二人組をあしらうのは正直手馴れている方だと思うんだ。兎がきょとんとしているから「何?」と眉間にしわをよせて聞けば「花火……なんか変わったさ?」と首を傾げられた。「さあね」自分から言う気もないし、そういうことを言うつもりはなかった。「……おい、黒豆」神田ユウがなにか言おうとしたが、僕をそれをとめるかのようにビュンッと彼の首筋に鋭く変形させた炎架をあてる。

「黒豆で呼ぶな。学習しろ、バカンダ」
「だったら、まずテメェがフルネームで呼ぶのをやめやがれ」

青筋をピクピクさせながら六幻に手をかけた。バチバチと火花が散る。アレンと兎がおろおろしていた。しばらく睨みあってから僕はにっと笑う。「!?」それに驚いていたが僕はとどめをさすように口を開いた。

「ユウ。これで満足?」
「な、どいうつもり……」
「あっ、マリ発見。やっぱりいると思ったんだ」

同じ元帥を師匠にしている二人なら行動をともにしているという予想はあたった。驚きで固まっている三人を無視して僕はマリのところに駆け出した。



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