「いやいや、普通砲弾よりウィルスが問題やろ?」 「僕だって普通にウィルスに対抗できてるし」 「それは寄生型やからやろ?」 「え、そうなの?」
きょとんとして言えば夢歌は目をぱちぱち瞬かせた。「えっとな」なにか頑張って説明しようとしていたが、わからなくて首を傾げる。考えた末、夢歌は「ははっ、そういや花火はそういうの気にしないんやったな」ドカッとソファーの背もたれにもたれかかって笑う。あぁ、夢歌が言いづらそうな表情を浮かべたのは普通の人間がAKUMAのウィルスに抗体があると知られたら気味悪がられると思ったからなのか。なんか考えるの疲れたから「はあ」ため息を吐いた。「幸せ逃げるでー」頭をわしゃわしゃ撫で回すから「やめい」とわき腹を突く。
「ぐうううっ。しばらく見ない間に腕をあげた……なっ」 「そういう悪ノリもとめるならリルにどうぞ」 「あいつにわき腹突かれてみい!死ぬで!!」 「ソーデスネー」 「しかも、ノアになっとるんやろ!?ほんまになんでアイツが天使の子とか言われとったねん!村人の頭おかしかったとちゃうん!?」 「ソーデスネー」 「だいたいなあ……って、花火きいとるん!?」 「聞いてる聞いてる。あ、そうだ。アレン、いつ出発するの?あのAKUMAがのってきた変なので行くんでしょ?」 「え、あ、はい。花火が動けるなら今日中のつもりですが……」 「ん、わかった。準備する」
「無視せんといてえ!」と泣きつく夢歌を引き剥がして立ち上がる。今日中に行くなら着替えないとね。団服と巫女服は最初に目を覚ました部屋においといたからとりにいこう。騒ぐ夢歌をスルーして部屋からでようとする。バクさんが夢歌を警戒しながら「……コイツは大丈夫なのか?」と聞いた。ノアの一件もあるし、疑うのは当然だ。僕は「大丈夫。この馬鹿が人の悲しみを利用するなんてできないから」貶しつつもフォローをいれる。部屋をでるとき、足をぴたっととめた。
「言い忘れてた」 「なんやぁ……まだ俺は貶されるんかあ?別にえんやけどな、花火なら」 「お前はマゾヒストか」
そんなこと言うつもりでとまったんじゃないよ。僕はまだ言ってないんだよ。夢歌に本心伝えてない。
「夢歌」 「へーい」 「あのとき助けてくれてありがとう」
夢歌のほうを見てふわっと笑みを浮かべる。 悪態は容赦なくたくさんついてるけど、そのていどで夢歌がはなれないと知っているから。夢歌に頭を撫でられるのも嫌いじゃないよ。リルがいなくなったことで、風当たりが強くなったのにずっとそばにいてくれた夢歌は本当に大好きなんだ。だからね、夢歌が生きてたと知って嬉しかった。
「夢歌、生きててくれてありがとう」
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