狼娘物語 | ナノ



AKUMAは最悪なことに二体いた。さきにいったはずのアレンがいなくて探してみれば、衝撃によって溢れた水に沈んでいた。「っち」舌打ちを鳴らしてフォーを探す。見つかったフォーはバクさんに抱えられていた。そして、二人はAKUMAからのびた糸によって、さきほどのアレンのように分解されかかっていた。そして後ろからはもう一体のAKUMAから攻撃を受けようとしていた。

「我命ずる。我が心許すものを守護せよ」

手馴れた手つきで印を結んで唱える。瞬時に後ろから攻撃しようとしたAKUMAとフォーたちの間には光りの壁のようなものができあがる。AKUMAが驚いて止まった瞬間を僕は見逃さない。反撃覚悟で、AKUMAのボディにむかってタックルをかまし、フォーたちから距離をつくる。

「アレン!さっさと起きろ!!」

レベル3二体相手はさすがに無理だっての!沈んでいるアレンにむかって怒鳴りつける。タックルでぶっ飛ばしたAKUMAは、すぐに立ち上がり「オマエ……ナァニ?」とギギギッと首を傾げる。人間を分解するAKUMAも厄介だけど、こっちのAKUMAも厄介そうだ。どうやって戦うか思案していると、チャプンと水の音がした。振り返らなくても、気配でなんなのかわかる。「相変わらず、とろい奴」鼻で笑うように毒づく。

「人間とアクマを救済せよ」

ゆっくり振り返れば、イノセンスの光りにつつまれた、まるで道化のような姿をしたアレンがいた。バクさんたちに繋がっていた糸はすでにきれている。あちらは任せていいだろう。くるっと身体を前にむけ、もう一体のAKUMAをみる。

「さっき、なんだって聞いたよね」
「やっぱ答えなくテいいヨ。オマエ、どうせ壊れるから」
「壊れるのはキミだ」

ドクリと身体が熱に帯びた。血液の流れが速くなる。イノセンスが早く解放しろと訴えてくる。スッと手を伸ばし、目を閉じる。

──さあ、戻ろう。戦場へ

「イノセンス、始動」



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