狼娘物語 | ナノ



この程度の防壁。僕なら簡単に破れる。自信があったから行動に移そうとした。しかし、その前に誰かにガンッと床におさえつけられた。「よし、そのまま抑えていろ!」バクさんの指示が飛ぶ。どうして、どうしてとめるの。貴方だってフォーを失いたくないのでしょ。顔にでてるじゃん。

「はなせ!僕も戦わせろ!!」
「フォーを見殺しにする気ですか!!!」
「キミたちは…エクソシストは我ら唯一の希望なのだ。エクソシストがひとり死ぬことが………どれほどこの戦争に影響することだと思っている?フォーは仕方ない。彼女のことを思うならウォーカー、花火くん。今は耐えて前に進むんだ」

なんだよ、それ。どういうことだよ。それじゃあ、まるで世界のためにフォーに死ねといっているようなものではないか。フォーを犠牲にして生きろと言っているようなものじゃないか。僕は世界を救うために戦ってるんじゃない。大切な人を守るために戦ってるんだ。なのに、見捨てれるわけないじゃないか。

「バクさんだってホントはフォーを助けたいんでしょ!その証拠にジンマシンだっていっぱい」
「ジンマシンはほっとけ!!キミの身体はダークマターの攻撃で分子に分解されかかってるのだぞ?戦うどころか僕が殴るだけでもキミの身体は崩壊してしまうかもしれないんだっ。それに、いくら自在に武器を生成できるからって、臓器の修復等で血液が足りてない状態なんだ!一回武器を生成しただけで生きるのに必要な血が足りなくなる危険な可能性がある!そんなキミたちを行かせるバカがどこにいる!!命令を聞け、エクソシスト!!!」

それくらい、知ってる。いくら肉弾戦や術を使うのが平気なくらい動けるようになったからといって、AKUMAと戦うための肝心なイノセンスで造った武器を生成するにはまだ血が足りてないことくらい。臓器に開けられた穴の修復のために武器の生成まで当分時間がかかることくらい知ってる。
ガクンッと力なくうな垂れた。片耳でアレンの言葉を聞く。存在自体が対アクマ武器。その言葉に胸がドキリと跳ねた。それは、アレンだけじゃなくて僕に当てはまる……否、僕こそ当てはまる言葉だと思うから。左腕のアレンのイノセンスが彼の守ったのは例外中の例外だ。神に愛されているどうの言われてもおかしくない。
僕は、そういうことじゃない。心臓にイノセンスを宿した僕は、体中を駆け巡る血液によって全体的になんらかのイノセンスの影響を及んでいるはずだ。確認するのが怖くて、やらないだけ。やれば身体全体を対アクマ武器にすることだって可能な気がする。

「行きます。ありがとう、バクさん」

アレンが岩石の前にたった。彼のことをとめられなく、バクさんは岩石による結界を一時的に開いた。それを見て、僕は取り押さえる人にむかって「行かせて……」と言った。その人から返ってきた言葉は拒否とかじゃなく、質問だった。

「キミはとても戦える状態じゃないだろう。犬死にしにいくつもりなのかい?」
「僕は死なない。僕が死ぬことによって悲しむ人がいるのを知ってるから。取り残される側の気持ちは、嫌というほど……知ってる」

その解答に、彼はフッと鼻で笑った。失礼な態度にムカッとしたが、押さえつけられた力が緩まったことを感じて、ムカつきがなくなった。これは、行っていいということなの?戸惑っていると、「ほんまに……」とひどく懐かしい喋り方が耳にはいった。それに驚いて、僕は目を見開く。

「ほんまに、かわらへんな。そういうところ」
「なん……で……」
「花火が死んだら悲しむっつーのに、俺もはいっとるんやからな。あないなの、ちゃっちゃと倒して戻ってきー」

僕の手を掴んで、彼はぐいっと僕を起こした。それから、アレンがでていったほうにむけて僕の背中を押した。

「ほな、いってらっしゃい」
「……いって、きます」

動揺は隠せないけど、それよりもフォーを助けることが先だ。僕はまだかすかに開いている隙間に向けて全力で駆け出した。



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