狼娘物語 | ナノ



なにが、起きている?いきなりフォーがかたまって、叫んだと思ったらフォーの身体から黒い異物がでてきた。そこからAKUMAが現れた。一連の流れが、まるでブラウン管越しからみている映像のようだった。ガチガチと歯と歯が合わさる音が大きく聞こえた。ガクガクと身体が震えていた。AKUMAが怖いのではない。自動的に発動した霊眼越しから見えるAKUMAの霊魂に。なんだ、あれは。今まで見たことのない魂だ。あれはレベル2のAKUMAなんかじゃない。──レベル3?
AKUMAから変な糸が伸びてアレンにつきささった。分解やら、分子やらなにかを喋っていた。それは左から右へとすり抜ける。僕はただ震えて、放心して、動けずにいた。

「花火くん!」

バクさんに大声で呼ばれてハッと我にかえった。僕は今、恐れた?AKUMAを?たった数日、戦場から離れただけで?守ると決めたじゃないか、大切な人を。グッと足に力をいれて立ち上がる。あたりを見渡せばチャン家独特の術によってできた防壁が崩れかかっていた。支部全体には慌てる人々の波。アレンの糸はどうやらフォーが断ち切ったようだ。僕は深く息を吸い、吐いた。バクさんやフォーが僕を呼ぶ声がした。激しくなった心臓を落ち着け、僕は手をAKUMAにむけてかざし目を閉じる。

「我に害を及ぼすものから汝の力で隔離せよ。硬く、強く、深く縛り、我を守れ」

カッと目を開き「守結!」印を結び、AKUMAにむける。その瞬間に漆黒の炎がAKUMAをおおった。さて、これがいったいレベル3相手にどれくらい保つかが問題だ。今のうちに避難を完了していただかなければ。くるっとAKUMAに背をむけバクさんたちのもとに走る。今のできごとで驚いた表情を浮かべていたが、今はそれどころじゃないことを思い出して彼らも走り出した。
バクさんに背負われたフォーは息切れをしていた。それを見て唇をきつく噛む。どうして、僕は反応できなかったのだ。さっき、なにに対して恐れたというのだ。北地区の支部員が全員避難したという情報を聞くと、バクさんは真剣な表情を浮かべて手を伸ばした。

「曾じいの血を引くボクらチャン家は、この支部の守り神の力を操作できるのだ」

次の瞬間、岩石が生えた。北地区の隔離。それは、どういう意味なのか僕は理解した。駄目だ、そんなの。万全な状態のフォーならまだしも、今の状態のフォーじゃ駄目だ。アレンの姿に擬態したふフォーの手をつかんだ。

「行っちゃ、駄目!」
「安心しろ。お前はあたしが守ってやるって約束したからな」
「いい……そんな約束いいから!いかないで!!」

いったい何年前の話をしているのだ。僕はもう戦えるんだ。僕がいくから、いかないで。ふわっと頭を撫でられた。「お前は、まだ発動できる状態じゃないだろ」フォーは見通していたのだ。生成できるほど身体が万全じゃないことを。「それでも、戦うから」か細い声で呟く。それでも、フォーは止まってくれなかった。

「エクソシストじゃない一介の守り神じゃあいつは倒せねェだろうけど、なんとか時間はかせぐから逃げろよ!」

やだ、いかないで。そんな、これで最期みたいな言葉いわないで。

「やだよ。フォー、フォー!!!」



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